プロメテウス・トラップ (ハヤカワ文庫JA) (ハヤカワ文庫 JA フ 6-1)

著者 :
  • 早川書房 (2017年3月23日発売)
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本棚登録 : 128
感想 : 15
4

ハッカーが主人公の本が読みたいなと思って適当に検索して出てきたのがこの本。なんの前知識もなく、著者名も聞いたことなかったけど、おもしろかった。

現役の金融系SEが書いたとあって(今もSEをされているのかは知らないけど)、ITまわりの描写が非常にリアルで、著者にはすっかり好意を持ってしまった。
というのも、ハッキングがメインの話なのにハッカーの描写に全然リアリティのない本の方が世間には多いから。
この本は2010年初出で、その後の2017年の文庫化にあたり世界情勢の変化が大きかったことを考慮してずいぶん改変を加えた、とあったが、2023年の今読んでも、他のハッカー小説みたく、読んでいて白けるほどの陳腐さがないのはスゴイと思った。少なくとも、10年以上も前の作品と聞いて想像するほどには古臭い感じは全くなかった。機器のスペックとかが一つ前のものかな、って程度。

この人のネーミングセンスも好きだなー。(←これ私的にはけっこう大事なポイント)
主人公の能條って名前、なんかキャラにピッタリ。素敵。もうこの名前以外考えられない。
プロメテ、パンドラってコードネームも良い。

キャラクターの中では村岡さんが一番好きだった。パンドラもかわいいけど、大人の男の魅力には負けます。同じインターポールでも、銭形警部とは真逆のキャラ。ぜひエリート道を突き進んでほしい。

話の中では番外編のパンドラ@アキバが楽しくて好きでした。
敵のPCに侵入してデータを消すのは、「時間がかかるからこの場ではちょっと無理だけど、後でやっておくねー」、とかいうあたり、リアルでいいなと思った。
アニメとかITに疎い小説家が書いた物語だと、その場でちゃちゃっとやってくれちゃったりするんですけどね。

本文とは全然関係ないけれど、著者があとがきで、「トランプ現象って、いろいろ事情はあるのでしょうが、ひとつには『もう疲れちゃったよ』というアメリカ人の悲鳴の表れなんじゃないかしらん」と書いていて、なるほど、おもしろい見解だな、と思った。
まあ、ナチスの登場も言い方は違うけど、歴史家から同じような意味のことを言われてますね・・・
ネット環境がその「疲れ」とやらを倍増させているような気がしなくもないけど、この本でも繰り返し書かれていたけど、私たち、もうインターネットとIT機器なしでは生きていけないですよね。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説(日本)
感想投稿日 : 2023年3月16日
読了日 : 2023年3月16日
本棚登録日 : 2023年3月16日

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