主人公は売れない高校生作家の千谷一也(ちたにいちや)と一也の高校に転入してきた人気作家の小余綾詩凪(こゆるぎしいな)。
一也の父はやはり売れない作家でしたが、他界していて、入院中の妹の雛子がいます。
一也は雛子の入院費の足しに小説を書いているという事情があります。
一也は詩凪になぜか共作を持ち掛けられます。
詩凪がプロット担当で、一也が文章を書くことになります。
書いていくうえで、二人はことごとく対立しながら話し合いを進めます。
詩凪のつくった主人公のことを一也は、まるでダメな自分のことのように感じてしまい「僕が主人公の物語。僕に物語はなくていい。誰も読みたがらない」と言い拒否し続けます。
以下ネタバレですので、お気をつけください。
詩凪は「自分の作品のテーマを理解せずに読み手の心を震わせることなんてできないでしょう」と言います。
「君は成功者だ。勝利者なのだ」
「ねえ、あなたは、本当に、なんのために小説を書いてるの?」
「僕は、読み捨てられる小説でいいから売れたかった。彼女の言っていることは理想ばかりだ」
そして、一也と詩凪は共作を一時止めてしまいますが、一也は詩凪がこの一年、一作も本を出版していないことに初めて気づきます。
詩凪の秘密に気づいた一也は、再び詩凪と共に作業することを選びます。
「物語には嘘ばかりが書かれている」
「小説はきっと願いだと思う」
「違うんだ。そもそも小説っていうのは泣かないために読むんだ」
「明日からの自分が、もう涙を流さないでいいように、小説を読むんだ」
「わたしの物語をどこかで読んでくれた誰かが、もう悲しい思いで泣かなくていいように、そう願いを託しながら小説を書いているの」
そしてついに一也は書き上げます。
一也はその次に必ず詩凪のための物語を書きます。
一也のデビュー作は主人公が、傷ついたヒロインを助ける話でした。
高校生作家の物語ではありますが、小説とは何かということを、新鮮な気持ちで考えさせられる物語でした。
- 感想投稿日 : 2020年12月6日
- 読了日 : 2020年12月6日
- 本棚登録日 : 2020年11月26日
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