豊饒の海 第三巻 暁の寺 (あかつきのてら) (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1977年11月1日発売)
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松枝清顕の親友であり、飯沼勲の弁護人となった本田繁邦は五井物産の招きで通訳の菱川とバンコックに招待されます。

本田は四十七歳になっています。
そこで、暁の寺(ワット・アルン)を訪ねます。
その後、王族のバッタナティド殿下の一番末のお姫様に謁見することになります。

そのお姫様、月光姫(ジン・ジャン)は七歳で物心ついてから「自分は日本人の生まれ変わりで、自分の本当の故郷は日本だ」と言っていて、頭がおかしいと思われては王室の恥になるから外国へ連れ出すことはできないので、幽閉されているのだという話を本田は菱川から聞きます。

本田は清顕の夢日記にあった記述を思い出しその姫が清顕の生まれ変わりと確信します。

本田は月光姫に会うと、姫は「本田先生!何というお懐かしい。私はあんなにお世話になりながら黙って死んだお詫びを申上げたいと足かけ八年というもの今日の再会を待ちこがれてきました。私を日本へ連れ帰ってください」とまさかの返事をしました。

姫の子どもらしい愛くるしさに本田は惹かれていきますが本田はひとり帰国します。帰国の翌日に真珠湾攻撃が始まります。
本田は懐かしくなってふと、松枝家に立ち寄ると九十五歳になった女中の蓼科に会い、聡子が元気にしていることを聞き出します。


そして第二部では本田は五十八歳になっていて十八歳になった月光姫が日本に留学してきて再会します。
そして本田はなんと月光姫ジン・ジャンに恋をしてしまうのです。

本田の恋は全く実らず、ジン・ジャンに本田が清顕の思い出の品である、エメラルドの指輪を与えるも、一度は本田に突っ返してきて、最後は指輪のことなど眼中にありませんでした。

この巻では本田が主人公ですが、ストーリーは面白かったのですが、何をいわんとしているのか今ひとつわかりませんでした。老いらくの恋の虚しさでしょうか。何かもっと深い意味がありそうな気がしますが。

本田は清顕であり又、勲でもある月光姫に恋心を抱いてしまったのですが、それははかなく散ったのです。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年1月26日
読了日 : 2023年1月26日
本棚登録日 : 2023年1月21日

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