この本は、家の本棚に積読していましたが、先日、山田正紀さんの『カムパネルラ』という、この本の表題作をモチーフにしたSF作品を読んで、本作も是非よまなければと、いまさらながらですが読みました。
表題作以外の作品も入っていますが、自分の為の記録として表題作のみレビューをします。
この作品は、学校ではいじめに遭い、父は帰って来ず、母が病に臥せっているジョバンニ少年がただ一人の親友であるカムパネルラと共に”銀河鉄道”に乗り、銀河を旅する物語です。
一見、美しい天の川を二人の少年が汽車に乗って旅する、壮大なロマンの物語だと読めますが、最後まで読むと、カムパネルラは、現実世界で、既に川に溺れた級友を助けるために、自らも溺れて死にかけていて、死への旅であったことが最後まで読むとわかりました。
何か別の本で、カムパネルラのモデルが賢治の妹のトシで、ジョバンニが賢治だと読んだことがあります。
以下ジョバンニと、カムパネルラの最後の方のシーンを抜粋。
「カムパネルラ、また僕たち二人きりになったねえ、どこまでもどこまでも一緒に行こう。僕はもうあのさそりのようにほんとうにみんなの幸のためならば僕のからだなんか、百ぺんやいてもかまわない」
「うん。僕だってそうだ」カムパネルラの眼にはきれいな涙がうかんでいました。
「けれどもほんとうのさいわいは一体何だろう」ジョバンニは云いました。
「僕わからない」カムパネルラがぼんやり云いました。
「僕たちしっかりやろうねえ」ジョバンニが胸いっぱい新しい力が湧くようにふうと息をしながら云いました。
天沢退二郎さんの「収録作品について」によると、賢治は第一稿からほぼ十年かけて第四次稿にいたるまで三度の大幅な改稿を試み第三次稿まではジョバンニの入眠はブルカニロ博士による一種の催眠実験であり、博士自ら「黒い大きな帽子をかぶった青白い顔の痩せた大人」の姿で、車内に出現し、ジョバンニにものの見方・考え方や進むべき道を教えさとすことになっていたそうです。
- 感想投稿日 : 2020年4月12日
- 読了日 : 2020年4月12日
- 本棚登録日 : 2020年4月12日
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