金曜日の本屋さん (ハルキ文庫 な 17-1)

著者 :
  • 角川春樹事務所 (2016年8月9日発売)
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本棚登録 : 1445
感想 : 169
5

レビューを拝見して知った本です。ありがとうございます。
ビブリオミステリーでは『ビブリオ古書堂の事件帖』などが有名ですが、この本も負けず劣らずとても、楽しい本でした。
主要な本以外にもいろいろな本が登場し、下手なブックガイドなどより数倍面白く読めました。
ご紹介していただいた方、本当にありがとうございました。
ブクログならではの出逢いでした。

以下、ネタバレしています。

第一話 読みたい本なんか見つからない
僕こと倉井史弥は北関東の小さな駅の中にある本屋<金曜堂>へ電車に乗って出かけました。
<金曜堂>は『読みたい本が見つかる本屋』としてSNSなどで有名です。
僕の探している本は今、闘病中の父で大型書店の経営者の父が好きだった、庄司薫の『白鳥の歌なんか聞こえない』。父には何度同じ本を持っていっても「これじゃない」と言われています。史弥はそこで探していた本に出会い、<金曜堂>でアルバイトを始めます。
「読書は究極の個人体験。人によって響く部分が違うのはあたりまえなのです」

第二話 マーロウにはまだ早すぎる
<金曜堂>にきていた女性客、猪之原寿子が本の万引きをしたと思い、僕は間違えて自分の本で書き込みのたくさんある『長いお別れ』(フィリップ・マーロウ清水俊二訳)を持っていたのをみつけます。万引き犯扱いされて寿子は怒りますが、同じ大学の職員と学生として再会した僕に寿子は自分の交際相手の男性を見張ることを頼んできます。寿子はなぜあんな外見も中身も申し分ない男性、瀬見鉦とに自分が慕われるのか全くわからないといいますが、それにはちゃんとした理由があったことが判明します。
瀬見兼人がいつも<金曜堂>で読んでいた本は『長いお別れ』で、飲み物は『長いお別れ』に登場するギムレットでした。

第三話 僕のモモ、君のモモ
<金曜堂>に子役の津森渚が現れて朗読会に参加します。そこで読んだミヒャエル・エンデの『モモ』の本を店員の楢川さんに譲って欲しいと渚が言うと、楢川さんは「この『モモ』は友だちからもらった大切な本だから誰にもあげられない」と言われてしまいます。
渚くんは「僕は灰色の男だからモモとはけっして友だちになれない」と言います。
店長の槙野さんは「モモがモモになるために必要なものは何でしょう。答えがわかったら渚くんもモモになれますよ」といいます。
そして、その後、渚くんは楢川さんが「友だちにあげたいから」と言って買った『モモ』をプレゼントされます。

第四話 野原町綺譚
藪北勝という人物が<金曜堂>に現れ、河童について書いた本は
ないかと言い出します。
槙野さんは梨木香歩の『家守綺譚』を持ってきます。
次に女性記者がやってきてオーナーの和久さんが地元のヤクザとつながりがあるのではないかと疑われますが、皆で女性記者を追い払い、和久さんの祖父の伊蔵が事の真実とともに、昔みた河童と自分の孫の和久さんがそっくりだと言い出します。
そして最後に藪北こそが新聞記者だったことが判明し、ヤスさん(和久)の家が何もやましい事がないということが世間に明らかになり、新聞記事には『家守綺譚』の『葡萄』という短編の文章も引用されます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年6月24日
読了日 : 2020年6月24日
本棚登録日 : 2020年6月24日

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