定職に就かず、本を読み、花を眺め、散歩に出て暮らす。
慌ただしく文明が発展していた明治時代においても、代助は、社会生活での泥臭い抗争や利害から離れ、自身の精神に誠実に生きていた。代助の姿は、人によっては「頭でっかちな、ただのニート」と映るかもしれないが、私は代助は、人間が真に求める純粋な精神の持ち主だと感じた。
(『草枕』の主人公が、都会の喧騒を離れて山奥の温泉地を訪れた際に求めていた精神に通じている。)
ただ、その精神も、友人の妻への恋心を成就させるために発揮されるのであれば、待ち受けるのは破滅だ。
自身の精神に誠実に生きるのが希望だが、社会や他者とどのように調和を図り、折り合っていくべきか。そのバランス感覚は現代に生きる上で必要不可欠ではあるが、また同時にジレンマを抱えることになる。
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作中には多くの花の描写があった。
代助が活けた鈴蘭の花瓶の水を、三千代が飲む描写が最も印象に残っている。
これが何を暗喩していたのか、作品を読んでいる最中も読み終わった後も、あれこれ考えている。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2024年1月13日
- 読了日 : 2024年1月13日
- 本棚登録日 : 2024年1月2日
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