「私は羨ましいんだ、美也たちが。大好きなんだよ。人間が好きなんだよ。そこに行けない自分のことが、大嫌いなんだよ。」p422
溢れ出すものを必死に堪えながら読んだ。
主人公が抱えているものは、きっとみんな、抱えているもの。楽しくないのに笑って、無理してるな自分ってわかっていてもひとりになるのは寂しくて、ふと、自分が空気のように感じて虚しくて。どうして自分だけうまくできないんだろう。どうして心から楽しめないんだろう。どうしてこんなにも所在が曖昧でふわふわなの。自分の居場所って何。
みんな、そうなんだと思う。
みんな、そんな少し•不在の気持ちを抱えて、楽しそうな周りの人たちを俯瞰して、馬鹿にして、それでも離れられずに羨んでいる。自分だけがこんな思いをしているのだと思い込みながら。
「二十二世紀でも、まだ最新の発明なんだ。海底でも、宇宙でも、どんな場所であっても、この光を浴びたら、そこで生きていける。息苦しさを感じることなく、そこを自分の場所として捉え、呼吸ができるよ。氷の下でも生きていける。君はもう、少し•不在なんかじゃなくなる」p525
辻村さんは照らそうとしてくれた。テキオー灯を文章にのせて、あたたかな光を送ってくれた。
「『誰かと繋がりたいときは縋りついたっていいんだよ。相手の事情なんか無視して、一緒にいたいって、それを口にしてもー』言いながら気が付く。それが、自分自身に向けての言葉なのだということに。他でもない私がそうしたいのだということに。
私は一人が怖い。誰かと生きていきたい。必要とされたいし、必要としたい。」p537
凍りの隙間から射す光に照らされて、溶けていく。
わたしは、救われたような気がした。
- 感想投稿日 : 2012年9月12日
- 読了日 : 2012年9月12日
- 本棚登録日 : 2012年9月10日
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