一族にさずかるはずの「先見の力」を授からずに死のうとまで思い詰めるライラエル。けれども図書館の司書として自分の居場所を見つけたときから、少しずつ運命がころがりだす。チャーターマジックで作り出した「不評の犬」いいなあ。ちょっと正体不明ではありますが、猫のモゲットとちがって(それもまた猫らしくていいんだけど)忠実で頼りがいがある。ライラエルが犬とともに、時間をかけてどんどん図書館の深部へと探求を深めていく様子は、自分の内奥を掘りさげていく過程のようで、とても象徴性に富んでいる。
一方、サブリエルの息子であるサメス王子は、自分がアブホーセンを継がなければならないことが重荷でしかたがない。このサムの後ろ向きさに対して「情けない」という感想が多く見られるのだけど、いや~同情に堪えないですよ。自分に向いていない仕事が生まれながらに決められているとしたら、地獄でしかない。
この巻は、こうして自分が何者であるのかを探し求める若いふたりの話が中心になっていて、YA感が強い。とはいえ、やはり死霊たちとの戦いは継続していて、その恐ろしさは半端ないのだった(弱虫)。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ファンタジー
- 感想投稿日 : 2018年3月7日
- 読了日 : 2018年3月7日
- 本棚登録日 : 2018年3月5日
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