不治の病にかかった恋人に振られた圭子は、
一週間後に隕石が衝突し人類は滅亡することを知り、
練馬から鎌倉の恋人宅まで歩いて向かうことを決意する。
圭子が元恋人と再会するときに着る服とハイヒールだけを持って出発したときは、道中に出会うあれこれのお話かと思った。
が、章が変わると、人形のように主体性のない妻が夫を殺して解体し、夫の肉を使って料理をしはじめるすごい展開。
圭子が交錯した人類滅亡を迎える4人の女の話が、圭子の道中に挿入される形。
圭子は主人公というほどに物語の大きな役割は背負っていない。
彼女はひたすら恋人に会いたい一心で前進する。
途中でバイクに乗って一気に鎌倉へ着いてしまうし大きなアクシデントにはほとんど合わない。
ただただ鎌倉を目指す。
各挿話の主人公達は、パニックになりその衝動が外へ向かう、というありがちな図式ではなく、それぞれに事実を受け入れて進んでいくのが新しい。
コテコテの新井素子作品であるから、文体がキライ、合わない、という気持ちもよくわかるけれど、やはり新井素子は天才だなと思う。
1981年に刊行された作品の改訂版。
二十歳のとき書いたなんてね。
『チグリスとユーフラテス』といい、何て嗅覚の鋭い人なんだろうと感心する。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2012年5月3日
- 読了日 : 2012年5月2日
- 本棚登録日 : 2012年5月3日
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