学びとは何か――〈探究人〉になるために (岩波新書)

著者 :
  • 岩波書店 (2016年3月19日発売)
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感想 : 109
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まさに同じ、「学びとは何か」について日々悶々としていた所で、本書にドキドキさせてもらった。
時間がないという人は、第6章以降でいいので読むといいと思う。
きっと同じ問いを抱えている人には、何かが整理されて見えるはずだから。

私が抱えていた問いは、学校教育における学びの揺れだった。
考えること、と、覚えることのズレ。
たくさん量をこなし、問題を解き、身に付けば点数になるじゃん、という考え方への違和感だった。

第6章では、論理的思考力・批判的思考力ということばから始まる。

事実を覚えることが知識であるという思い込み。
そこで、事実として切り取り可能な断片を頭の中にどんどん貼り付けてゆく。
そのことを本書では「ドネルケバブ・モデル」と呼んでいる。

そうではなく、知識とは可変的システムである。
そうでなければ、「使える」ようにならない。
そこには暗記をする上でも意味合いや精査、解釈の方を重要視する。

「批判的思考とはつまり、前項で述べた科学的思考と基本的に同じで、ある仮説、理論、あるいは言説を、証拠にもとづいて論理的に積み重ねて構築していく思考のしかたのことを言う。」

「豊富で精緻な知識を持っていれば直観の精度は上がり、「ひらめき」になる。知識がないところで直観に頼れば、「あてずっぽう」になってしまう。」

探究心を育てるためには粘り強さも必要だと述べる。これも、非常に納得させられた。

「学校は「知識を覚える場」ではなく、知識を使う練習をし、探究する場となるべきた。知識を使う練習とは、持っている知識を様々な分野でどんどん使い、それによって、新しい知識を自分で発見し、得ていくということである。それこそがアクティヴ・ラーニングの本質である。」

そこには子どもだけでなく、大人の姿勢、そして大人がどう子どもに教材を提供し、調理させるかが重要だということも忘れてはならない。

また、もう一つ。
「大事なことは、一人で考えることをおろそかにしないことだ。」
もちろん、グループワークへの批判ではない。
タイトルには「人と一緒に、人を頼らずに」とある。

この一冊は、私がずっともやもやしていた、どっち付かずの問いに、明瞭な道を示してくれたものだった。きっと、何度も触れることになるだろう。
心から感謝したい。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2016年
感想投稿日 : 2016年4月3日
読了日 : 2016年4月3日
本棚登録日 : 2016年4月3日

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