こころの処方箋 (新潮文庫)

著者 :
  • 新潮社 (1998年5月28日発売)
3.78
  • (405)
  • (389)
  • (551)
  • (60)
  • (15)
本棚登録 : 5765
感想 : 461
5

定期的に河合隼雄に戻ってくるのに、この本は、どの章もいいなあって思った一冊。

一番最初に読もうと思ったのは、自殺しようと思うほど追い詰められていると、止めたくなるのだけど、死ぬ思いを経て(むしろ経ないと)生まれ変わる時もある、という話だった。

それほどまでに、いなくなりたい、消えてしまいたいに込められた否定は強いものなんだと思うし、でも自分が死んで、変わることで、生きることに繋がる可能性もあるんだなぁ……とも思えた。

あとは、100点以外はダメな時もある、も、結構衝撃だった。

人と向き合わないといけない時、逃げてはいけない時、100点の答えを出さないといけない場面。
少しだけ、分かるような気がする。
いつも100点を目指していると、結局ここぞという時に、踏ん張れなくなってしまう。

余裕を持ちなさい、余裕が、本当のピンチに生かされる余力にもなると言われたことがある。
私は、いつも余裕の持ち方が下手で、100点を目指して80点で安心してしまうし、余裕と思うと何もしなかったりする。難しい。

そういう意味では「物事は努力によって解決しない」が名言かな。
でも努力を完全に放棄する勇気もないから、解決しなくてもまあ、努力くらいはさせてもらおうのスタンス(笑)
こんなに頑張ったのに、努力したのに、は、自分以外のものへの憎悪を不必要に高めてしまうんだな。

「権力の座にある者は、孤独に耐えねばならない」も、殴られた。
自分の権威を守るために権力を行使すると、それは孤独ではなく孤立になってしまう。
権力のある者とない者と、同等にはなれない。
だからこそ、その差をよく理解して、適切な距離を保つこと。時には権力を棄てる経験を持つと良いということが書かれていた。

権力を棄てることは、権威を棄てることと同じではない。
内的権威を、いかに磨いていくか。
なるほど。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年
感想投稿日 : 2021年8月20日
読了日 : 2021年8月20日
本棚登録日 : 2021年8月20日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする