以下ネタバレ含みます。注意。
途中、ページを捲りながら、結局これは「変わらなければ良かった」話にしかならないんだろうか?と憤りながら進めていた。
利口になりたいと願う無垢なチャーリィに、脳の手術実験を行った結果の物語。
チャーリィにとっては分からないなりに「しあわせな世界」だったはずが、知能指数が上昇するにつれ、「それ」は自分の無知を貶め、嘲笑う世界だったことに気付き、孤独に陥る。
利口になったが、友達はいなくなった。
知識が極大に達しようとする中、ネズミのアルジャーノンと交わす、不思議な交流シーンが切ない。
脳の退化の中で、自らの身体を傷つけ、それでも迷路に向かっていくアルジャーノンを「明日の自分」として見つめるチャーリィ。
短い時間の中で得た膨大な知識と、知識によって認められた人としての威厳が、加速度的に剥がされていく恐怖に、人は耐えられるのだろうか。
でも。それでも。最初に知りたいと願うチャーリィも、間違いじゃないと思うのだ。
そして、幸せは、知恵の多寡だけが生み出すものでも、きっとない。
最終のシーンでチャーリィが、「家族があること」や「みんなみたいな人間」だと分かったことに、変化がもたらしたものがあるのだと、少しだけ息をついた。
読書状況:読み終わった
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カテゴリ:
2021年
- 感想投稿日 : 2021年5月10日
- 読了日 : 2021年5月10日
- 本棚登録日 : 2021年5月10日
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