アルジャーノンに花束を〔新版〕(ハヤカワ文庫NV)

  • 早川書房 (2015年3月13日発売)
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感想 : 957
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以下ネタバレ含みます。注意。



途中、ページを捲りながら、結局これは「変わらなければ良かった」話にしかならないんだろうか?と憤りながら進めていた。

利口になりたいと願う無垢なチャーリィに、脳の手術実験を行った結果の物語。

チャーリィにとっては分からないなりに「しあわせな世界」だったはずが、知能指数が上昇するにつれ、「それ」は自分の無知を貶め、嘲笑う世界だったことに気付き、孤独に陥る。

利口になったが、友達はいなくなった。

知識が極大に達しようとする中、ネズミのアルジャーノンと交わす、不思議な交流シーンが切ない。
脳の退化の中で、自らの身体を傷つけ、それでも迷路に向かっていくアルジャーノンを「明日の自分」として見つめるチャーリィ。

短い時間の中で得た膨大な知識と、知識によって認められた人としての威厳が、加速度的に剥がされていく恐怖に、人は耐えられるのだろうか。

でも。それでも。最初に知りたいと願うチャーリィも、間違いじゃないと思うのだ。
そして、幸せは、知恵の多寡だけが生み出すものでも、きっとない。

最終のシーンでチャーリィが、「家族があること」や「みんなみたいな人間」だと分かったことに、変化がもたらしたものがあるのだと、少しだけ息をついた。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2021年
感想投稿日 : 2021年5月10日
読了日 : 2021年5月10日
本棚登録日 : 2021年5月10日

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