もうすぐ絶滅するという紙の書物について

  • CCCメディアハウス (2010年12月17日発売)
3.92
  • (89)
  • (89)
  • (71)
  • (14)
  • (4)
本棚登録 : 1653
感想 : 158
3

綺麗な本です。買わされます(笑)

電子書籍より紙の本がいいよ!という本ではなく。
書物はどんな風に扱われてきたのかということを、延々話し合っております。

その中で、データの儚さ、味気なさに言及しているのですが、私が小さい頃に愛用していたMDって、CDの次にやってきた媒体だったのに、ほんと滅びてしまいましたよね。
紙は、少なくとも紙以上にはならない(だろう)から、難点はあるけれど、何かに取り変わられる怖さはないのかもしれない。
一方、データや入力方式については、まだまだ新しくなってゆく。

それは紙にとっては脅威だ!とは思わなくて、紙に出来なかったことを、どう補うんだろうという、期待もあるのです。
私たちは「書かれたもの」に興味をなくしたわけではない。

この対談の中では、ひとつ、フィルタリングについて挙げられています。
膨大な書物の何を、誰がデータ化するのか。
書かれた内容の真偽をどう判定するのか。
そして、嘘が書かれた書物には価値がないのか。
紙が勝手にデータ化するわけはないので、誰かがその作業を担うわけですか……。
そこにイデオロギーを絡めて言及されています。

もう一つ、面白かったのがデータの消去の話。

「『検索』機能を使えば、ドキュメント内に出てくるある特定の単語すべてを検出し、マウスで一回『カチッ』とやるだけで消去できてしまうように、ある単語ないしある語群だけを地球上のすべてのコンピューターから消去してしまうような情報科学による検閲だって想像可能ではないでしょうか」

書物の歴史には、焚書という災厄が何度も繰り返されたけれど、そこには炎による破壊と再生という象徴的な意図を見出せる、とある。
なるほど、対してデータの世界は静かですね。
知らない間に、言葉が消えてしまう可能性や、如何に。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 2019年
感想投稿日 : 2019年8月11日
読了日 : 2019年8月11日
本棚登録日 : 2019年8月11日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする