いちまいの絵 生きているうちに見るべき名画 (集英社新書)

著者 :
  • 集英社 (2017年6月16日発売)
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2016年末に手にした「デトロイト美術館の奇跡」。

破綻寸前の美術館に起きた奇跡を描いた作品に魅せられて、上野の森美術館の「デトロイト美術館展」に出かけた。

美術館に行ったのなんていつ以来だっただろうか。学生時代は、キャンパスに隣接した美術館に頻繁に通っていたのに。

社会人となってからも、都内の美術館を訪れるのが楽しみだったのに。

だが、いつの間にか時間と心の余裕がなくなっていた。


ただただ絵画と対峙して楽しむ。

美しさに圧倒される。

作品の背景を知ることで様々なことを思索する。

そんな大切なことを思い出させてくれ、美術館に呼び戻してくれた著者は、私の恩人の一人であると言っても過言ではない。


専門家としての豊富な知識と経験。

純粋にアートを愛する無垢な心。

それが両立する彼女の作品は、気取りがなくわかりやすい。

「青春と読書」の連載記事をまとめた本書には、28作品すべてがカラーで掲載されている。

アヴィニョンの娘たち、ゲルニカ パブロ・ピカソ

最後の晩餐 レオナルド・ダ・ヴィンチ

セザンヌ夫人 ポール・セザンヌ

バルコニー エドゥアール・マネ

大壁画「睡蓮」 クロード・モネ

エトワール エドガー・ドガ

星月夜 フィンセント・ファン・ゴッホ

アデーレ・ブロッホ=バウアーの肖像Ⅰ グスタフ・クリムト

真珠の耳飾りの少女 ヨハネス・フェルメール

マドリッド、1808年5月3日 フランシスコ・デ・ゴヤ

叫び エドヴァルド・ムンク

道 東山魁夷

「その絵は世界中のどこかの美術館に収蔵されていて、いつでも観にいくことができる。そのこと自体、世界中のすべての人に与えられた幸運であると私は思う」(P42)

「美術館訪問は『遅きに失する』ということがない。そこがいいところなのだ」(P123)

「たったいちまいの絵。そう、ただそれだけである。けれど、そこには光がある。私を、あなたを、私とあなたが生きる世界を変える力が、その絵には秘められている」(P253 あとがきにかえて)

移動が制限されて、人と自由に会うことができない2020年。
美術館だけでなく、あらゆるイベントが中止や自粛に追い込まれる世界的危機と対峙している今。

そんな時に、時間も空間も超えた芸術との対話の機会が得られた。

それは、著者のアートを心から愛する情熱があったればこそだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年3月20日
読了日 : 2020年3月20日
本棚登録日 : 2020年3月20日

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