IWGP(池袋ウエストゲートパーク)シリーズの第13弾。
池袋西口の果物屋の青年マコトのもとへ、今日も行き場のない悩みを抱えて人が訪ねて来る。
毎年、新刊が出るたびに楽しみにして読んできた。
だが、一方で思う。読むのが年々つらくなっている。
毎年、マコトのもとを訪ねて来る人たちの悩みのが、深刻になり、複雑になり、取り返しのつかないレベルまできているからだ。
読み進めるうちに、やり場のない感情がこみ上げてくるのだ。
『滝野川炎上ドライバー』
真面目で地元で愛される宅配ドライバーの河本順治。人がいいばかりに知人の借金の保証人となり、離婚。離婚した妻の交際相手に引き取られた小学三年生の透の腕にある青いあざを、マコトは見つけてしまう。
児童虐待と、ネットにあふれる正義感からくる炎上。
「ネットができてから、おれたちは正義の力を行使するのに酔うようになった。誰もが指先ひとつで裁判官になれる時代になったのだから」(マコト)
『上池袋ドラッグマザー』
「飛びおりるまえに谷底をのぞきこんでいるような目で」中学三年生の木崎真唯は、マコトと訪ねて来る。
「ママが別の人になってしまったんです」
普通の人の前に、当たり前の顔をしてやってくるドラッグの恐怖。
『東池袋スピリチュアル』
鰯の頭も信心から。
分かっていても、人は怪しげな「スピリチュアル」に手を出してしまう。
礼儀正しい女子大生の越川若葉には、見えるのだという。そこに居ないはずの「人」が。
そして、その「能力」に、IT企業の代表が目をつける。
『裏切りのホワイトカード』
Gボーイズのキング・タカシのもとに怪しげな儲け話が舞い込んで来る。
マコトは、日本有数の製薬会社をもつ財団の若き理事の潮見美穏に呼び出される。
「ブラックボード」(裏仕事の出会い系掲示板)を運営している弟・晴臣を探してほしいとの依頼。
出口、否、入口も見えていない迷宮に、マコトは仲間と乗り込んでいく。
知恵と、人脈と、胆力で、複雑化するトラブルに挑んでいくマコト。
そこにあるのは、目の前にいる困っている人をほっとけないという、最も簡単で、最も難しい、大事な人としての生き方だ。
- 感想投稿日 : 2017年10月29日
- 読了日 : 2017年10月29日
- 本棚登録日 : 2017年10月29日
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