初の江國香織作品。日常と非日常の境目、何事もなく続いてきた生活の中でちょっとした波風が立つ局面が取り上げられていることが多い。その瞬間は平凡のように見えて、過去を思い出すきっかけとなっており、そこからストーリーが広がっていく。爆発的な出来事があるわけではないので、実際に想像すると地味な光景なのかもしれないが、過去の想い出と結びついた登場人物の中で生じている感情の動きが緻密に表現されている。緊張感のある場面(夫の家族と会うなど)もあるのだが、どのキャラクターもどこか落ち着きがある振る舞いをしているのがかっこいい。
空いた時間や通勤時間に読むような本ではなく、まとまった時間が取れる時に腰を据えて読むべき本な気がする。自分も、ぱっと読むだけではどうもよく分からず、文章の背後にある心情をしっかり考えながら読んだり、もう一度ストーリーの冒頭に戻って読み返したりしていた。(日頃から適当な読書をしていることを反省しなければ...)
表題作の『号泣する準備はできていた』も好きだったが、『住宅地』、『じゃこじゃこのビスケット』も面白かった。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2022年10月30日
- 読了日 : 2022年10月30日
- 本棚登録日 : 2022年10月10日
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