アラスカ 風のような物語(小学館文庫) (小学館文庫 G ほ- 1-1 VISUAL SERIES)

著者 :
  • 小学館 (1998年12月4日発売)
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本棚登録 : 464
感想 : 31
5

20代後半に星野道夫さんの本に出会ってから、
多大なる影響を受けてきた。
意識しているわけでもなく、つい何度も手に取ってしまう。

星野氏の写真、文章は、
アラスカの自然や人々の前でどこまでも謙虚かつ自然で、
自然に対する畏怖と親しみが一体になっている。

その星野氏の在り方に衝撃を受け、
今でも憧れをもってその在り方に
近づきたいと思っているのかもしれない。

久しぶりに本棚から出したこの本は、
再読なのに新鮮な衝撃をもたらしてくれた。

アラスカの辺境の地の原住民の子供たちに絵を描かせると、
決まって大きな風景のごく片隅に人物を小さく描くという。
人間と自然の関係はそのような感覚でとらえられるのだろうが、
その感覚は、日本人にもあった(ある)もののように思う。

人間がどういう生き物なのかを
自然の一部として教えてもらえるような本。


「早春。小さな焚き火が揺れている。パチパチパチパチ、
 僕の気持ちをほぐしてくれる。
 熱いコーヒーをすすれば、もう何もいらない。
 やっぱりおかしいね、人間の気持ちって。
 どうしようもなく些細な日常に左右されていくけど、
 新しい山靴や、春の気配で、こんなにも豊かになれるのだから。
 人の心は深く、そして不思議なほど浅い。
 きっとその浅さで、人は生きてゆける。」

「ある晩オーロラが現れ、全天を舞った。
 人はいつも無意識のうちに、自分の心を通して風景を見ている。
 オーロラの不思議な光が語りかけてくるものは、
 それを見つめる者の、内なる心の風景の中にあるのだろう。」


星野さんは1952年生まれで大学生だったときに、
神田の古本屋街の洋書専門店でアラスカの写真集を見つけ、
その本に載っていた小さなエスキモーの村に心を奪われた。
その村はシシュマレフ村。

訪ねてみたいが、訪ねようにも方法がわからない。
手紙を書くにも、住所もわからない。

しかし、辞書で「代表者」という単語を調べ「Mayor」という言葉を見つけ、
「Mayor
Shishmaref
Alasla U.S.A」
という宛先で手紙を出す。

内容は、「村を訪れたいが、誰も知りません。
なんでも働くのでどなたかの家に置いてください」というものだったらしい。

半年後、奇跡的に返事があり、彼はアラスカへ。
1971年の夏だったそうだ。

その後アラスカ大学へ進学し、以後アラスカの人々、自然、野生動物を撮り続け、
国内の雑誌だけでなく海外の著名な雑誌にも作品を発表。
多くの写真集やエッセイが残っている。

1996年にカムチャッカ半島でヒグマに襲われ逝去。享年43歳。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 心の栄養
感想投稿日 : 2014年8月25日
読了日 : 2014年8月25日
本棚登録日 : 2014年8月25日

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