影の現象学 (講談社学術文庫)

著者 :
  • 講談社 (1987年12月10日発売)
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感想 : 61
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個人的には、河合隼雄氏の数ある著作の中でも一番の名著ではないかと思う。これはしっかりと、学術文庫で出すレベルの内容になっている。

人はそれぞれ その人なりの生き方や人生観をもっているが、抑圧されたか、取りあげられなかったか、ともかく、その人によって生きられることなく無意識界に存在していながら、その人によって生きられなかった半面を、その人の「影」と呼んでいる。私たちは、いつかはその自分の「影」の存在を自覚し、向き合わなければ、人として成長できないのだ。

「われわれはこの世に生まれた瞬間から、常に死の可能性をはらんで生きている。「生」は「死」に向かって進行しているのであり、生きることとは、すなわち、死につつあることである。生に対して常にその反対方向の死という裏づけをもってこそ、われわれの生がダイナミックな弾力性をもつのであろう。」
このあたりは、アルフォンス・デーケン、エリザベス・キューブラー・ロス、日野原重明あたりを読んでいれば、胸にストンと落ちてくる。
こうして生きていることが「死につつある」ことを、今一度、思い出そう…

決してなくなることのない自分の「影」を自ら背負って生きてゆく。向き合う。それがだいじ。。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年6月19日
読了日 : 2022年6月17日
本棚登録日 : 2022年5月21日

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