ユーモアは老いと死の妙薬

  • 講談社 (1995年11月22日発売)
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著者の子ども時代は第二次世界大戦の最中だった。身近な人々の死、そして自身もぎりぎりの死の淵に立たされた体験によって、「人生の大切なものや美しいものは、すべて贈られたものなのだ」ということを学んだ。

時間について。
「人間は、とかく惰性に押し流される。しかし、今決心して始めなければ、私たちの人生は、あっという間に時間切れになってしまう。思い立ったら、すぐ実行しなければ、明日という日は、もう来ないかもしれない。」

人との関係について。
「もし、相手の言うのことのすべてに唯々諾々と従うだけの人がいたとすれば、それはやがて、その人自身の自立した人格さえ失うことになりかねず、また、相手にとっても、その人はいつしか退屈極まりない存在に過ぎなくなってしまうだろう。…互いに自分の考えをはっきりと述べ合い、有益な批評を交わす生き方を怠ったならば、いつか全く心の通い合わない冷ややかな関係に陥るに違いない。」
本当に相手を愛している人は、あえて相手に反対して闘うだけの勇気を持ち合わせている。
カール・ヤスパースはこれを『愛ゆえの闘い』と表現した。
表面的な同意と気楽な付き合いに終始していては、深い人格的な『我と汝』の出会いは体験できない。

核心を突いている。まさにその通り。事なかれ主義の気楽な付き合いに終始していては、互いを高め合えるはずもない。真の愛があるからこそ、闘う勇気を持てるのだ。

自分の人生から逃げている人、全方位から逃げまわって生きている人に、第6章だけでも是非読んでほしい。

death education 死への準備教育
死を深く考えることによって、私たちは今生きていることの尊さを改めて実感できる。
つまり「死への準備教育」は、そのまま「生への準備教育」にほかならない。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2020年2月19日
読了日 : 2020年2月15日
本棚登録日 : 2020年2月1日

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