モーパッサン短篇選 (岩波文庫 赤 551-3)

  • 岩波書店 (2002年8月20日発売)
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感想 : 38
5

モーパッサンは、300を超える短篇を書きましたが、その中から15篇を訳者が厳選収録したもの。
特に良かったものを以下に。

『シモンのパパ』
母と二人暮らしのシモンという子供が、父がいないことでイジメに遭っており、絶望して死を考えていたところ、鍛冶屋の職人に助けられ…心温まる、いい話でした。

『田園秘話』
隣り合う二軒の百姓家で、どちらも4人の子供がおり、貧しいながらも仲良くくらしていました。ある時、裕福ながら子供のいない夫妻がやってきて、遊んでいる子を気に入り、毎月多額のお金を終生贈るから、養子にもらえないかと持ちかけます。一軒の家は断り、もう一軒は承諾します。その顛末は…本当の幸せとは何かと考えさせられる、教訓めいた話でした。

『二人の友』
普仏戦争で包囲されているパリの道で、時計屋の店主がかつての釣り仲間と偶然再会します。昔話に花咲かせるうちに、久々に一緒に釣りに行くことにしましたが、川辺は敵との最前線。果たして二人は…気持ちはわかりますが、戦争中なんですよね。

『ジュール伯父さん』
『メゾン テリエ』での感想と同様。新訳で読みやすかったです。

『首飾り』
ある日、着飾るゆとりもない貧しい夫婦が、大臣宅の夜会に招待されます。なけなしのお金を夫に払ってもらい、ドレスを購入したものの、装飾品がないために知人からダイヤの首飾りを借りて参加します。ところが、その夜会から帰ってくると、ダイヤの首飾りがありません…教訓めいていて、ちょっとしたどんでん返しのお話。解説に、夏目漱石が「不愉快」と評していたことが書かれていて、なかなか興味深かったです。

『帰郷』
海辺の漁村で暮らす貧しい夫婦には、5人の子供たちがいました。上の二人は再婚の妻の連れ子で、夫との間の子供は3人です。そんな家庭に、ある日から一人の浮浪者が寄りつくようになります…悲惨な運命にもめげない強さを感じました。最後が爽やかで好きです。

『マドモワゼル・ペルル』
ある家庭でお手伝いをしていながら、家族同然に暮らしている老嬢。そんな彼女には、ある秘密が…ちょっと悲しい恋物語。

『山の宿』
道が閉ざされてしまう、冬季の山の宿で春まで留守を預かって過ごす、二人の男の物語。ある日、老ガイドが一人で猟に出かけたまま、その日に帰ってきませんでした。若いガイドは、探しに行けども見つけることができません。絶望と恐怖のうちに、時は刻々と過ぎてゆき…恐怖は狂気に変える。ちょっとしたホラーですね。

他の短篇も良かったです。タイトルだけ列記。
『水の上』『椅子直しの女』『メヌエット』『旅路』『初雪』『ソヴァージュばあさん』『小作人』

追記:
表紙はルノアールの『小舟』。『水の上』の元のタイトルは『小舟に乗って』です。解説に著者がボート漕ぎに熱中していたことが書かれています。
表紙と合っていると書きたいところですが、その内容はちょっとしたホラーでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2024年2月18日
読了日 : 2024年2月17日
本棚登録日 : 2024年2月15日

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