18世紀末、フランス革命を経た国際社会を背景に、「永遠平和の実現」についてのイマヌエル・カントが真面目に考察した国際平和理論と実践方法。以下、概略。
【予備条項】
1、将来の戦争の種がひそむ平和条約は単なる休戦
2、独立している国家は互いに侵すことはできない
3、常備軍は廃止。但し、防衛手段としてはOK
4、戦争遂行を気安くさせるので戦争国債は禁止
5、他国への不干渉
6、戦争時の卑劣な戦略は和平時の信頼性を損なわせる
【確定条項】
1、各国の政治体制は共和制がベスト
2、統一世界国家より諸国家の連合スタイルにすべき
3、世界市民法は各国市民が友好である権利を保障
【第1補説】
自然の摂理によって人間社会は次第に成熟すると、結局、利己的人間を抑制するとともに商業を発達させようとするので平和が望ましくなる。人間は永遠平和を道徳的義務とするはず。
【第2補説】
国家は哲学者のこうした意見を妨げてはならない。
【付録】
政治家はこうした道徳を手段に使うべきでなく、道徳の実現を目指すべき。政治は自ら取り決めた原則は、民衆に担保するため公表しなければならない。
21世紀初頭、2度の世界大戦、冷戦を経て、ここに書かれていることはシンプルな内容だけに不完全ながらも実現されているもの(国)も多い。そして、テロの時代。カントがある意味想定し、また想定を超えた国際社会と状況になっているが、当時も今も空想理論として斥けるのは容易いけれど、カントが実践論として真面目に考えた内容は時代を超えて不断な再構築の努力を惜しむべきではないだろう。
ちなみに、とある旅館の看板に付いていたという本書名はカントがやはりお茶目に名付けたのでしょうか、それとも真面目な義憤なんでしょうかねぇ?あれれ?っていう観点があるのは仕方がない。(笑)
- 感想投稿日 : 2012年4月22日
- 読了日 : 2012年4月22日
- 本棚登録日 : 2011年4月4日
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