三島由起夫、いや由紀夫が(笑)、手紙形式というちょっと変わった着想にて、手紙ならではの人間の機微な感情の行き来について物語しています。
登場人物は、金持ちマダム、色男の中年デザイナー、若き劇団青年、OL、太ったぐうたら青年という感じでこれだけでも、これからのわくわくするような話の展開が期待されます。
手紙でやり取りする話の内容が割と軽いので手軽に面白く読めてしまいますが、そこは三島由紀夫なりのそれぞれの心理描写が楽しくて、なかなかじっくりと読ませてくれましたね。
特に金持ちマダムと色男の中年デザイナー、太ったぐうたら青年のキャラが際立っていて、終始にやにやしながら読了しました。
群ようこの解説にもある通り、それぞれの年代に即した感情移入ができるようにもなっていると思われ、十年二十年後に読み直すと、また違った見方で本書に接することができるほど、軽いなりに味わい深い物語になっていると思います。
これは手紙ならではの、何回も読み直すという特質を上手く使った筆致になっているからなんでしょうね。
あと、最後の三島由紀夫からの読者への言葉もなかなか面白いものでした。
名前を間違えるなというのは当然として、手紙を書く時は相手は自分に関心を持っていないと思って書け、というのは目から鱗が落ちないまでもなるほどそうかなと思わせるものがありました。
現代では手紙を書く機会が減り、電子メールでやり取りする機会の方が断トツで多くなっていますが、電子メールでも同じことが言えますよね。
電子メールでは味わいを感じることは少ないですが、私も相手の関心を引くような書き方を心がけたいと思います。
三島由紀夫によれば、相手の関心を得るには、一、大金 二、名誉 三、性欲 四、感情 だそうですが。(笑)
- 感想投稿日 : 2019年9月23日
- 読了日 : 2019年9月16日
- 本棚登録日 : 2010年1月9日
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