ケモノの城

著者 :
  • 双葉社 (2014年4月18日発売)
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本棚登録 : 1759
感想 : 281
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極悪非道、鬼畜、まさにそういった言葉が当てはまってしまうような、1人の男によって起きた一連の事件と、その事件に関わった数々の被害者と加害者についてを描いた作品。「北九州監禁殺人事件」を基にした作品ということで、作中に出てくる通電を利用した虐待や、とんでもない死体処理が実際に行われていたということが信じられない。

人や物に対しての愛情を全く感じず、ただ生きていくために利用していらなくなったら捨てる。ひたすらに貪欲で「ケモノ」のような犯人は、人間の面を被っているものの、中身は決して人間ではない。「ケモノ」が人間に“化けて”いる「バケモノ」である。という表現には戦慄を感じた。



結局、事件の真相は未だ闇の中。
あの小さな一室の中では何が起こっていたのかもはや知る由も無く、犯人も不明。被害者含め事件に関わった人皆が不幸になっている。決して読んだ後に明るくなれるような作品ではないけれど、改めて人の怖さを知るきっかけになった。

作中で犯人だと言われていた「ウメキヨシオ」なる人物は、周りの人達をどんどん自分に従うようコントロールし、非情な振る舞いをしていたが、彼のもたらした影響の中でも恐ろしいのは、彼の凶悪性が徐々に周りの人たちに“感染”していったということ。人は時にはどこまでも残酷になれる。そして、そんな状況にいつしか慣れてしまう。「まさか自分は…」なんて思わず、このことは少なからずも教訓になった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年6月3日
読了日 : 2019年5月27日
本棚登録日 : 2019年5月21日

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