BUTTER

著者 :
  • 新潮社 (2017年4月21日発売)
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本棚登録 : 4993
感想 : 658
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【あらすじ】
男たちから次々に金を奪った末、三件の殺害容疑で逮捕された女、梶井真奈子。世間を賑わせたのは、彼女の決して若くも美しくもない容姿だった。週刊誌で働く30代の女性記者・里佳は、梶井への取材を重ねるうち、欲望に忠実な彼女の言動に振り回されるようになっていく。濃厚なコクと鮮烈な舌触りで著者の新境地を開く、圧倒的長編小説。

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序盤、物語の流れに入っていくのにかなり苦労しましたが、中盤以降は一気読みでした。どちらかというと、女性向けの内容だと思います。
物語全体を通じてテーマとなっているのが「欲望」というワードです。特に食欲・性欲というものにスポットライトが当てられています。
現代社会において、人間は欲望に対し様々な制限が課されていると思います。特に「婚姻」という他の動物にはないルールと、社会性が生んだ「常識」という概念が、欲望と現実の間を歪ませているのではないでしょうか。
私自身も、自分が本当にやりたいことは何なのか、それを考えるのがすごく難しいと考えており、仮に何かやりたいことを考えついても、それが自分が本当にやりたいことなのか、それとも周りが「こうあるべき」と要求している(であろう)ことに迎合しているだけなのか、わからなくなってしまうことがあります。
自分の欲望に従順な人が生み出すパワーは、とても強く感じられます。なぜなら、婚姻や常識を正面からぶち抜く力があると、周りはそれができない自分の無力さを痛感するからです。でも、この物語を読んで、その強力なパワーは、裏を返せば独りよがりでとても悲しいものなのだとも思いました。何に憧れるかは人の自由ですが、極端な考えに憧れそうになったときは一歩立ち止まって「本当に大丈夫?」と自分自身に問いかけられるようになりたいと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2020年8月12日
読了日 : 2020年8月12日
本棚登録日 : 2020年8月12日

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