坊っちゃん (新潮文庫)

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「三四郎」の次に「それから」を読みに行く前にこの小説に寄り道したのは大正解だと感じている。
確か中学生の時に読んでから40年以上経って再読し、つくづく思ったのは一体この小説、最初から最後まで「ぼっちゃん」が発する悪口雑言に満ちているということだ。
身内に悪口、学校に悪口、同僚の教師たちに悪口、赴任先の土地に悪口、土地の者、風習、食べ物、宿屋夫婦や下宿先の夫婦にまで悪口雑言。
小気味いい程であるがなぜここまで悪口と不満の嵐なのか。
深く読めば漱石の当時置かれていた位置や教育界への批判等があるのだそうだが、小中学生の課題図書の対象として読んだときはただただ小気味のいい正義漢が赴任先で暴れまわって東京に戻ってくるという勧善懲悪な爽快感が残る。

清水義範さんの『独断流「読書」必勝法』の最初の項にこの「ぼっちゃん」が載っている。
あわせて読むと非常時面白い。

漱石の作品の中で比較的若年者向けの作品のような評価があるけれど、しかし中学というのは「旧制中学」のことであり「師範学校」と中学の対立はなぜ、それから主人公の再就職先の街鉄とは一体なんなのか、等をかんがえると現代の若いものにもわかりづらいところが多いという。
ただし、わからないままでも頑張って作品を通して読めば面白さが伝わるとしている。確かにその通りと思う。
そして作品の意外な視点というかウンチクもある。
例えば「ぼっちゃん」の主人公の名前はなんというのか??
赴任先の中学は何処なのか?
毎日通った温泉は何処なのか?

どうでしょう。問題として出されたら主人公の名前は思いつかないでしょうが、
赴任先は四国の松山、
温泉は道後温泉
と胸を張って答える方がほとんどではないかと思います、が・・・

しかし正解は順に
主人公の名前は作品中出てこない。
赴任先の土地の名前も作品中に出てこない。
従って温泉もどことは書いていない。

どうでしょう、学生の課題図書として軽く読むのはもったいない。
もう一度読み返してみるのも面白いと思います。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2012年2月15日
読了日 : 2012年2月15日
本棚登録日 : 2012年2月11日

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