血と暴力の国 (扶桑社ミステリー マ 27-1)

  • 扶桑社 (2007年8月28日発売)
3.88
  • (53)
  • (60)
  • (52)
  • (8)
  • (2)
本棚登録 : 587
感想 : 63
4

 アメリカの犯罪小説。偶然、銃撃戦のあった現場から大金を見つけた主人公が殺人者に追われ、事件に巻き込まれていく。読点を極力省き、鉤括弧を使わない文体。
 独特の文体ではあるが、人物の行動に焦点をあてる描写と相まって、違和感はない。いかにもアメリカらしい乾いた狂気といった感じ。おそらく、これが湿っぽい描写だったら、雰囲気に合わず、単に読みにくいだけだっただろう。鉤括弧のないセリフに関しても、各セリフが短いことでそんなに混乱しないし、サラッとしているが印象深い。映画になっているようだが、確かに向いている気がする。
 話の展開としては、主人公モスが死ぬシーンの描写がうまいと感じた。保安官の話に移ったと思ったら、何の前触れもなしにモスが死んでいる。あたかも、今までに死んだ他の人間と大差がないように。非常にやるせない気分になる。だが、これが殺されるということなのだろう。
 最後の夢のシーンはとても印象深かった。生き延びる運命、死ぬ運命。それは誰が決めるのか。殺人者シュガーはその運命の執行人なのか。保安官ベルは最後、運命に引き寄せられたと感じたようだが、どうなのだろう。個人的には、それは本人が決める問題だと思う。ベルがそう思うのなら、やはりそれは運命なのだ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2013年9月10日
読了日 : 2013年9月10日
本棚登録日 : 2013年9月10日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする