「甲野さん。頼むから来てくれ。僕や親父のためはとにかく、糸公のために来てやってくれ」
「糸公のために?」
「糸公は君の知己だよ。叔母さんや藤尾さんが君を誤解しても、僕が君を見損なっても、日本じゅうがことごとく君に迫害を加えても、糸公だけはたしかだよ。糸公は学問も才気もないが、よく君の価値を解している。君の胸の中を知りぬいている。・・・僕は責任をもって糸公に受け合ってきたんだ。君がいうことを聞いてくれないと妹に合わす顔がない。たった一人の妹を殺さなくっちゃならない。糸公は尊い女だ、誠のある女だ。正直だよ、君のためならなんでもするよ。殺すのはもったいない」
甲野は哲学の研究者。継母と妹からは、社会的地位もなく、ふらふらした情けない人と蔑まれている。
だけど、親友の宗近は、甲野の本質を見抜いていて、人付き合いを避ける甲野を何かと気にかける。
宗近の妹糸子は甲野を慕っているけれど、甲野が何気なくいった「あなたはお嫁に行かないで、そのままのほうがいい」というひとことに縛られて、気持ちを伝えられない。
上の会話は、妹の気持ちを知った宗近が、家出しようとする甲野のところに来て、自分の家に来るよう説得する場面。
(私の筆力ではエッセンスを抜き出せず、引用・・・)
恋愛は、動物みたいに求めあう面だけがクローズアップされがちだけど、それだけじゃない。
自分を理解してくれる誰かがいること。理解したいと思う誰かがいること。その幸せに気づかせてくれた作品。
読書状況:読み終わった
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恋愛
- 感想投稿日 : 2011年9月30日
- 読了日 : -
- 本棚登録日 : 2011年9月30日
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