ガリア戦記 (講談社学術文庫)

  • 講談社 (1994年4月28日発売)
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感想 : 54
3

塩野七生氏が著書の中で絶賛していたので試しに読み始めてみたが、読み始めた時は「それほどか?」という印象。

塩野氏が歴史家でも研究者でもないのに歴史書のような装丁、引用でミスリードしながら嘘混じりの誤解・勉強不足の内容を平気で書くことや『ローマ人の・・』の書き方への嫌悪を差し引いても、
1) 原文で読んでいないこと、
2) 私が日本語・英語の優れた報告書(= より進んだ時代の洗練された形式)に慣れていること、
3) 同時代のローマ人のレベルを知らない(日本書紀を読んだ経験から、同時代人はかなりの野蛮人であり、簡潔に系統的に書けるのはかなりの知識人、才能であろうことは想像できるが・・)こと、
の3つの要素がネガティブな印象に影響している可能性は大いにある。


巻末の解説や用語集から先に読んだ方が時代背景や当時のローマの制度などを知ることが出来て戦記の内容が理解しやすい。
解説にある、カエサルの書いた原本はこの世にもはや存在せず、残る複数の写本は10世紀以降の物であることや、写本にかなりな差異があることは考えてもみなかったことで、驚くと共に納得した。
戦記中ではガリア人が極めて薄弱に記述されているが、それも社会体制の変革期であったことなどが細く解説されておりこれもわかりやすい。
8年間にわたる遠征の経路やガリアの部族の地図もあって、内容を理解するのに役立つ。
カエサルとは別の著者が補足的に書いた8,9年目の部分については、解説では「泥沼に入り込んだような・・」と酷評しているが、訳者の力量か、そこまでひどくはない印象だった(ただ、それ以前の文章よりも"劣る"感じのする部分は何カ所かあった)。

解説込みで読み直すと、
(写本で多くの人が手を加えていることを勘案しても)これだけの文章を極めて短時間でまとめ上げるのは驚異的であると感じた。ましてや、手書きのため時間がかかり、紙(羊皮紙)も貴重で推敲も十分に出来ない時代であろうから、その点を含めて恐ろしいほどの才能を持っていたのだと感じる。
最後まで読んでみて「内乱記」も読んでみたいと思う内容だった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 古典文学
感想投稿日 : 2024年3月23日
読了日 : 2021年11月1日
本棚登録日 : 2021年2月20日

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