エンデュアランス号漂流記 (中公文庫 B 9-5 BIBLIO)

  • 中央公論新社 (2003年6月1日発売)
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感想 : 50
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とあるご縁で本書に出会い一気に読みました。とても面白かったです。結末は分かっていましたが、どういうストーリーだったのかは本書でかなりイメージアップできました。20世紀初頭(1914年)イギリス人のシャクルトン隊長は世界初の南極大陸横断を達成すべく、エンデュアランス号(忍耐号)で南極に向かいます。しかし南極上陸前に浮氷に阻まれ、その目的は結局果たせなかったものの、「全員が生きて帰還する」という目的を果たしたという意味で本書のストーリー自体は偉業だと思います。言葉では言い尽くせない苦難、寒さ、飢餓などがあったのだろうと推察されましたが、文字通り隊長以下全員が「エンデュアランス」をもって生き抜いた、というストーリーです。

個人的にはホメロスの書いた叙事詩「オデュッセイア」を連想させました。これは古代のトロイア戦争後にオデュッセウスが故国へ帰る苦難の航海を描いたストーリーですが、シャクルトンがまるで20世紀版のオデュッセウスにでもなったかのようで、苦難な道のりを諦めず、部下を鼓舞し、牽引していく様がオーバーラップして見えました。本書は隊員が撮影した漂流中の写真も何枚か掲載されていて、非常にリアリティの高い良書だと感じました。結末を分かっていながら読んだとはいえ、読後は無量の感動がわきあがってきます。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2023年4月30日
読了日 : 2018年7月5日
本棚登録日 : 2023年4月30日

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