少女不十分 (講談社文庫)

著者 :
  • 講談社 (2015年11月13日発売)
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感想 : 32
4

女児と男子大学生の誘拐・監禁譚という、なんとも時事に即したイマドキな話題だが、「女子小学生に男子大学生が誘拐・監禁される」という点で少し特殊であり、気を惹く大きな点だった。まあそんな話、普通ではないし、そのプロット自体に無理があるので、その無理をどう納得させてくれるのだろうかという期待を込めて読んだ。結論から言うとそれは大きな期待はずれだったし、結局かなり強引に物語が進行していて、その筋立てそのものに対しては楽単の度合いがかなり大きかったけれど、小説としてはそこそこ楽しめた。

この話は現在作家である主人公が、学生時代に遭遇した事件について回想して語るというもので、そのうえその「作家」というのは序盤で明言こそしないものの、おそらく「西尾維新」本人らしい語られ方をする。月産原稿用紙1000枚だとか。いかにもノンフィクションであるかのように書かれるが、まあどう考えても実話であるはずもないし、つまりそこらへんの諸々がおおむね《嘘》なのである。

そしてまた作中において自己言及的に「小説の必要条件は嘘をつくことではなく、物語をつくることである」などといった旨の記述があり、つまりこの小説は序盤においては「小説」ではなく単なる「嘘」にすぎない。しかし月産原稿用紙1000枚だとかいうのはおそらく西尾維新にとっての事実だろうし、そういった「事実」と「嘘」を故意に曖昧にして書いてあることも分かる。ところが、話が結末に向かうにつれてどんどん話の「物語らしさ」が強くなっていく。ドラマチックになっていく。いつの間にか「嘘」が「物語」になり、「小説」になっていく。そういう構造をもった小説なのである。

だから結末、あの都合のよすぎる結末も"そういうものとして"書かれている。実話らしからぬ、物語らしい物語、あまりに陳腐すぎて笑ってしまうほどの「物語」としてのエピローグこそがこの構造のキモなのだろう。

そうそう、それからこの話は「女子小学生に男子大学生が誘拐・監禁される」というプロットと同時に「男子大学生が小説家として必要な、(嘘をつくのではなく)物語をつくることができるようになる」というプロットも抱えており、それがいい感じにうまくハマったクライマックスはわりと好きだった。
それもまた「いかにも」すぎて、「物語らしさ」を補強する要因の一つだったのだけど。

……という好意的な解釈をしたけど、もっと文章上手に書いてくれー。
推敲してるのかコレ? とか勘ぐってしまった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: motoiの本棚
感想投稿日 : 2016年4月3日
読了日 : 2016年4月3日
本棚登録日 : 2015年11月26日

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