第二次世界大戦終結から冷戦を経た現代に至るまでのアメリカのロシア政策あるいは無策を描く。確かにプーチンが大統領になってからのロシアは冷徹で戦略的な諜報活動によってその姿を保とうとして、それにある程度成功していたのかもしれない。特にトランプ当選に象徴されるSNSでの世論コントロールは改めて恐ろしいものだと思う。とはいえそこにはロシア独特の空虚な大義のなさが強く感じられる。確かにNATOの拡大は元々の話と違うものだ。しかしロシアはあまりにも都合の良い過去に自分自身が惑わされているように感じてならない。そもそも面積以外の面で本質的に大国であったことがないロシアが歴史のいたずらのようなナポレオンに対する勝利やヨーロッパの外縁だからこそ成功した革命、さらにヒトラーの狂気によって第二次世界大戦での戦勝国側に立った巡り合わせで冷戦の東側の名主になったことが亡霊のようにロシアにまとわりついているのではないか。そしてそれがロシアの人々の軛になってしまっているのではないか。その幻想を維持するマシーンの機能として政治戦(積極戦)やサイバー攻撃など手段だけが洗練されていくのが虚しい。先の見えないウクライナの情勢を見るにつけ、そう思ってしまう。
それにしてもこの本の翻訳は読みづらい。
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- 感想投稿日 : 2022年12月14日
- 読了日 : 2022年12月14日
- 本棚登録日 : 2022年12月14日
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