代表的日本人 (岩波文庫 青 119-3)

  • 岩波書店 (1995年7月17日発売)
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新渡戸稲造 「武士道」、岡倉天心 「茶の本」と並ぶ、内村鑑三の、「代表的日本人」
その特徴は、欧米人に向けに、外国語でかかれたものを、和訳したものを改めて出版したものである。
「代表的日本人」は、日清戦争中に、Japan and the Japanese の題で、公刊された書物の再販です。

5名の特徴は、いずれも、貧乏な家庭に生まれ育ち、そこで、人から非難や抵抗をうけて、苦労して大成をなし、人をまとめ上げて和となし、死んでは聖人として称えられる。名や財を求めず、清貧にあるものを、内村鑑三は、代表的日本人と呼んだ。

それぞれ、気になったのは、以下です。

■西郷隆盛
・動作ののろいおとなしい少年であった西郷を変えたのは、縁戚の武士が自らの前で腹を切り、「命というものは、君と国とに捧げなければならない」を語ったこと。それを彼は生涯わすれることはありませんでした。
・西郷に影響を与えた人物、それは、藩主の斉彬と、水戸藩の藤田東湖先生の2人であった。
・機会を作るのも、それを用いるのも、人である。
・西郷とは不思議な人で、ヨーロッパ文化というものにまったくの無関心でした。彼の度量が広く、進歩的な人物の教育はすべて東洋によっていました。
・物事は、一度動き始め、進路さえきまれば、あとは比較的簡単な仕事である。その最初の指導者が西郷隆盛であった。
・西郷と勝、旧友がいう、我々が一戦を交えると、江戸の罪のない人々が苦しむこととなる。西郷の情が動き、江戸は救われた。
・強い人は、弱い人が相手でないとき、もっとも強い。西郷の強さの奥には、女性的な優しさがありました。
・彼が掲げた「敬天愛人」とは、「天はあらゆる人を同一に愛する。ゆえに、我々も自分を愛するように人を愛さなければならない。」ということです。

■上杉鷹山
・変革とは他人を待つのではなく、まず自らが始めなければなりません。
・鷹山の倹約はけちではありません。施して浪費するなかれ、
・東洋思想の一つの美点は、経済と道徳を分けない考え方にあります。富は常に徳の結果であり、両者は木と実との相互の関係と同じです。
・鷹山の優れたことは、改革の全体を通じて、家臣を有徳の人へ育てようとしたことである。

■二宮尊徳
・仁術さえ施せば、この貧しい人々に平和で豊かな暮らしを取り戻すことができる
・信念:ただ魂のみ至誠であれば、よく天地をも動かす
・利己心はけだもののものだ。利己的な人間はけだものの仲間である。村人に感化を及ぼそうとするなら、自分自身と自分のもの一切を村に与えるしかない。
・尊徳にとって、あくどい手段で獲得した財産は本当の財産ではありませんでした。

■中江藤樹
・天子から庶民にいたるまで、人の第一の目的とすべきは、生活を正すことにある
・藤樹の理想とは、謙譲に徹することでした。仏陀はそれにかなう人ではなかったのです。
・藤樹は、弟子の徳と人格とを非常に重んじ、学問と知識を著しく軽んじました。
 学者というのは、徳によって与えられる名であって、学識によるものではない。
 学識は学才であって、生まれつきその才能を持つ人が、学者になることは困難ではない
 しかし、いかに、学識に秀でていても、徳を欠くなら学者ではない
 学識があるだけではただの人である
 無学の人でも徳を備えた人は、ただの人ではない
 学識はないが学者である
・先生は利益をあげることだけが人生の目的ではない。それは、正直で、正しい道、人の道に従うことである。とおっしゃいます
・藤樹によって謙譲の徳とは、そこから他の一切の道徳が生じる基本的な道徳でした。これを欠けば一切を欠くにひとしくなります

■日蓮上人
・すでに「末法」が世に到来していること、新しい世をもたらすためには、新しい信仰が必要であり、その機会が到来していることを深く確信しました。
・預言者故郷にいれられず、といわれます
・私はとるにたらぬ、一介の僧侶であります。しかし、法華経の弘布者としては釈尊の特使であります。それゆえ梵天は我が右に、帝釈天は我が左に合って私を守り、日天は私の先導となり、月天は、私にしたがいます。我が国の神々はすべて頭をたれて私を敬います。
・日蓮の大望は同時代の世界全体を視野に収めていました。仏教はそれまでインドから日本に東に進んできましたが、日蓮以後は、日本からインドへ西に向かって進むと日蓮はいっています。
・闘争好きを除いた日蓮、これが私どもの理想とする宗教家であります。

目次
凡例
はじめに

1 西郷隆盛 新日本の創始者
2 上杉鷹山 封建領主
3 二宮尊徳 農民聖者
4 中江藤樹 村の先生
5 日蓮上人 仏僧

ISBN:9784003311936
出版社:岩波書店
判型:文庫
ページ数:256ページ
定価:780円(本体)
発売日:1995年07月17日第1刷
発売日:2021年05月27日第46刷

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感想投稿日 : 2023年8月25日
本棚登録日 : 2023年6月28日

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