(株)貧困大国アメリカ
著:堤 未果
岩波新書 新赤版1430
アメリカ
アメリカの貧困の原因に迫る書
多国籍企業が、ロビー活動を通じてアメリカ政府を通じて、国民をそして、取引国に浸透していく、必要であれば、貿易協定もそして戦争さえも引き起こすことすらできる
失業率は9.6%(2010年)だが、職探しをあきらめた潜在的失業者も加算すると実質20%という脅威的な数字になる
問題は、仕事の空き自体が少ないことよりも、まともに暮らせる賃金の仕事が見つからないことなんです。
■奴隷農場
SNAP:アメリカ政府が低所得層や高齢者、失業者などに提供する食料支援プログラムだ。
SNAP受給者にとって、抜けられないループを作りだしているのです。貧しい者はさらに貧しく、富める者はますます資産を増やす、という構図ですね。
1992年にカナダ、メキシコとの三か国間のNAFTAを結んだとき、政府は農業生産と雇用が拡大し、経済成長で国が豊になると宣伝した。
だが、実際、安い人件費と規制緩和でうなるように設けたのは、労働者ではなく、農産複合体、と製薬業界だった。
マーガレットたちは、アメリカの契約養鶏業者のほとんどが、たどる道をすすんでいった。
一度契約したら抜けられず、一方的な契約で雪だるま式に膨れ上がる借金にからめとられていく。
この国の養鶏業者の間で、デットトラップ(借金の罠)と呼ばれるパターンだ。
どんなに理不尽な要求をされても契約者は途中で抜けられなくなり、利子だけでも毎月帰さねばと自転車操業にはまりこんでいきます。
大学生が借金漬けになる学資ローンと同じですね。
伝統的な農業は、時代遅れ、非効率、と批判され、世界をリードするために、強い農業を目指すべきだという論調が国全体を覆っていた
工場式農業はシステマティックで、無駄のない、利益拡大方式だ。
1980年代以降、アメリカ国内の牧場主と農業従事者の自殺率は急激に増えている
アメリカ国内では、30年で30万軒の農家が消滅している
GM:遺伝子組み換え
GMトウモロコシを与え続けたラット群が次々に発病し始める、そのGMトウモロコシは、モンサント社によって全米で栽培され、家畜飼料の他、人間が食べる朝食シリアルやコーンチップとしても広く流通している
■GM種子で世界を支配
イラク侵攻が終わりをつげたあと、主権をにぎったのは、イラク国民ではなく、多国籍企業であった
多国籍アグリビジネスは、政府を味方につけて大規模化を阻む、国内法の改正を繰り返し、ウォール街の後押しで、寡占化、市場を独占した結果、株主の顔ぶれも、市場も生産地もあらゆるものが国境を越えた
モンサント社のGM種子を使用する農家は、アメリカ、カナダをはじめ、世界中どこでも同様のライセンス契約を結ばされる
・自分の農家でとれた種子を翌年使用することは禁止
・毎年種子は、モンサント社から購入
・農薬は必ずモンサント社から購入
・毎年ライセンス料をモンサント社へ支払う
・何かトラブルが生じた際はその内容を他者に漏えいしない
中小企業は、インドの貧農と同じ運命をたどり、特許使用料と通常の倍必要になった高い農薬代の支払いに押しつぶされていく
食料は武器だ というアメリカ政府の主張は、この間ずっとぶれることはなかった。
諸外国に、民主主義、強い農業、財政再建、人道支援、などの理由に介入、集約させた広い農地で輸出用GM作物の大規模単一栽培を導入させ、現地の小規模農民を追い出した後は、株式会社アメリカが動かしていく
インド、イラク、アルゼンチン、ブラジル、オーストリアなど、その勢いはとどまることをしらなかった
等々
目次
プロローグ
第1章 株式会社奴隷農場
第2章 巨大な食品ピラミッド
第3章 GM種子で世界を支配する
第4章 切り売りされる公共サービス
第5章 「政治とマスコミも買ってしまえ」
エピローグ グローバル企業から主権を取り戻す
あとがき
ISBN:9784004314301
出版社:岩波書店
判型:新書
ページ数:240ページ
定価:860円(本体)
発売日:2013年06月27日第1刷
- 感想投稿日 : 2023年12月28日
- 本棚登録日 : 2023年7月14日
みんなの感想をみる