アラブの格言 (新潮新書 11)

著者 :
  • 新潮社 (2003年5月1日発売)
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4

サダム・フセインとの戦争時にあらためて、出版し直したものとあります。
荒野に暮らすアラブ(ベドウィン)が自然の中を生き抜くための、習慣、神とのかかわり方、考え方を伝えてくれる一冊です。

アラブのIBMということばがでてきます。
I:インシャラー 約束の念押しを迫ると答える 意味は、神の思し召しがあれば、ようは、100%保証したわけでない
B:ブクラ いつできるかと問う答え。明日、でもいつになってもブクラのままである。
M:マレシ 約束が履行されなかったことについてなじるとその答え。理のないこと、過ぎたことは仕方ないじゃない。

気になったことは以下です。

・アラブ諸国の人たちは、スポーツで、国旗のものに結束することはある。だが、彼らにとって大切なのは、部族の概念である。
・電気のない土地では、ほとんど例外なく民主主義が定着しない。民主主義を育てたのは電力である。それならば電力の恩恵を受けない土地では、どういう支配体制が行われているかというと族長支配なのである。
・「人に食べ物をやる時は、満足するまでやれ。殴る時は、徹底的に殴れ」
 自分で守らなければ、自分も家族の生存も不可能なのである。

・戦いをおこす原動力はいくつもあるが、もっとも普遍的なものは復讐である。正義のためでは、人はなかなか動かないが、自分の家族、財産、権利、あるいは、恥に加えらえた暴力を人は決してわすれることはない。

・女は、ベールと墓以外何ももっていない。

・ともかく人は生き抜かねばならない。暑さ寒さ厳しく総じて水も不足している土地で生き抜くには、それほどたやすいものではない。そこで人は死なない方法を考える。自然も人間をとり殺すが、何より恐ろしい敵は人間なのだから、相手を見抜く眼力を養わなければならない。

・「他人を信じるな。自分も信じるな」
 信じるということは、疑うという操作を経たあとの結果であるべきだ。疑いもせずに信じるということは、厳密にいうと行為として成り立たないし、手順を省いたという点で非難されるべきである。

・「他人の家では思っていることをしゃべらず、ドアを開けず、質問をするな」
 肉体的力を支えるのは精神力である。自制、知識、他人の話を聞く姿勢などについて、多くの格言を残した。

・「人は見かけでは半分しかわからない。会話ですべてがわかる」
 この観察法は人があふれる都会でも有効である。だか最近は、スマホやゲームに時間を費やす人が増え、会話は衰退の一途とたどるばかりだ。健全なのはむしろアラブのほうだ。

・「血の一滴は、千の友に匹敵する」
 友情の中でさえ、命の危険が問題にされることは承認済みなのである。血を流す勇気もなく、命をささげる決意もなく、金銭さえも捧げない人間になんの友情が期待できるだろう。

・「議論の下手な男の下は長くなる」
 おしゃべる男の話は内容がない

・荒野に暮らす人々にとって、人間は人間としてそこにいてくれるだけで貴重品だ。

・通常、花嫁は血のつながった一族からもらうことになっている。つまり、妻にするのは従姉妹をもらうことになる。、

・結婚のみならず、生活上の経済、社会的地位などを守るに、他人は決して信用しない。すべて、同宗教であって、しかも血族である人々によって固められるのである。

・学校に通えないベドウィンたちは、親が教師の役目もかねる。親はしばしば文字を読むこともできないであろうが、それでも生活の上では子供たちの偉大な師である。

・複数の妻を持つ夫は、どの妻をも平等に扱わなければならないことになっている。

・貧困こそ、我々の中の卑怯さと残忍さを露呈し増幅する。

・アラブ(ベドウィン)は帰ってくる
 彼らは他部族と確執があれば決して忘れない。彼らと戦った人々はそのことを知っているのであろうか。  が終わりのことばです。

目次は次の通りです。

はじめに

第1章 神  追うものと追われる者は、共に神の名を口にする
第2章 戦争 一夜の無政府主義より数百年にわたる圧政の方がましだ 
第3章 運命 世界は二人の人間に属した。殺された男と、彼を殺した男と
第4章 知恵 水を節約するように言われた途端に、誰もが水を飲み始める
第5章 人徳 あなたには栄誉を、私には利益を
第6章 友情 歓迎されない客人は、大英帝国のようにいつまでも居座る
第7章 結婚 私は妻にお前なんか離婚だといった。すると彼女はベットにおいでと命じた。
第8章 家族 家に老人がいないなか、一人買ってこい
第9章 貧富 貧乏は叡智
第10章 サダム・フセイン バスラの反乱以後は廃墟

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
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感想投稿日 : 2022年8月16日
本棚登録日 : 2022年8月11日

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