イスラム金融入門: 世界マネーの新潮流 (幻冬舎新書 か 5-2)

著者 :
  • 幻冬舎 (2008年5月1日発売)
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イスラム金融入門
著:門倉 貴史
幻冬舎新書

イスラムに金利がないとは聞いていたが、イスラム金融という体系があるのは本書で知りました。

イスラム金融というのは、シャリーアというイスラム法の規則に従った金融取引のことである

ヒヤルという方法がある。ヒヤルとは実質的には利子を伴う金融取引を、物の取引に見せかける行為である
ヒヤルの1つに、モハトラ契約というのがある。商品を掛けで高く売って、それを安い価格でただちに買い戻す行為を指す

イスラム教の教義に反することがないように、利子のつかない当座預金にお金を預けたり、普通預金で預金する場合であっても、元本についてる金利の部分を寄付に回していたりした

IRTI,IFSBというイスラム金融の専門機関の推定によると、イスラム金融の総資産額は、2005年時点で、8050億ドルに上がる
2001年9月11日の同時多発テロの影響で、米国の金融機関などに預けられていた膨大なムスリムの金融資産がいつ凍結されるかもわからないという状況になり、ムスリムが自分たちの金融資産を先進国の市場から引き上げるという動きがでるようになった。
そして、引き上げられたお金、イスラム金融のほうへと向かったのである

イスラム金融とは、一言でいえば、利子の取引がない金融である

イスラム金融は、イスラム教徒以外の人が利用することもできる
コーラン(声を出して読むべきもの)と、ハーディス(伝承)の教えに基づいて作られた法律が、シャリーア、と呼ばれるイスラム法である
イスラム金融は、このシャリーアの中にある、ムアラートで、定められた金融活動の規範に適合した金融取引のことである
シャリーアには、すべての国やムスリムに通用するようないわゆる、グローバルスタンダード(国際標準)は存在しない

イスラム金融は、4種
 ①ムラーバハ 銀行がお客様の代わりに商品を購入して、その商品に一定ノマージンをのせてお客様に販売する仕組みである
 ②イジャーラ 賃貸借契約の意、リース形態
 ③ムダーラバ 銀行が投資家からお金を預かって、そのお金を事業に投資する ベンチャーキャピタルに近い 銀行は経営には口を出さない
 ④ムシャーラガ 銀行と投資家が手を結んで、事業の共同経営を行う 銀行は経営に口を出してくる
イスラム金融債 スクーク イジャーラやムシャーラカをベースにつくられた金融商品
イスラムの金融保険 タカフル
 ①ファミリー・タカフル 生命保険
 ②ジェネラル・タカフル 損害保険

イスラム金融を専門とする、イスラム専門銀行と、一般金融を兼務するイスラミック・ウィンドウがある
ハラワ 非公式の国際送金システム、手軽、手数料が安い ⇒ アングラマネー

イスラム金融のポストBRICs
 VISTA ベトナム、インドネシア、南アフリカ、トルコ、アルゼンチンの5カ国
  ■インドネシア 世界最大のイスラム教徒国
  ■トルコ 親日国 財閥(サバンジュ、コチ、ゾール、オヤック)、政教分離はケマル・パシャ以来の伝統
 MEDUSA マレーシア(M)、エジプト(E)、UAE(U)のドバイ首長国(D),サウジアラビア(SA)
  ■マレーシア イスラム銀行が急増、プミプロラ政策
  ■エジプト 観光収入、スエズ運河の収入、原油天然ガス、海外からの直接投資 で急成長
  ■UAE 7首長国 アブダビ、ドバイ、シャルジャ、ウム・アル・カイワイン、アジュマン、フジャイラ、ラスアルハイマ
  ■サウジアラビア 世界最大の産油国 経済特区(SEZ)、メガ経済都市構想

イスラム諸国のイスラム金融事情
 ■ブルネイ BIBD:イスラム・ブルネイ・ダルサラーム銀行
 ■バーレーン イスラム法のグローバル・スタンダードをつくろう
 ■シンガポール IBアジア:イスラミック・バンク・オブ・アジア
 ■香港 イスラム金融債、イスラム投資ファンド
 ■UK 英国金融サービス機構:FSA イスラミック・バンク・オブ・ブリテン
 ■イラン すべての金融システムが、イスラム金融 
 ■スーダン すべての金融システムが、イスラム金融 ダルフール紛争
 ■パキスタン ネクストイレブン
 ■インド タタ財閥がバングラディッシュに投資 ムスリムは1億5千万人、全人口の13.4%
 ■ナイジェリア 銀行・保険の金融セクター
 ■クウェート 12のイスラム銀行、2つのイスラム保険会社
 ■ヨルダン 全方位距離外交
 ■シリア 社会主義国家
 ■新疆ウイグル自治区、ウィグル、カザフ、キルギスの民族は、イスラム教徒
 ■日本 
 ・三菱東京UFJ,三井住友、みずほ がGCCへ進出
 ・ドバイの政府系投資会社がソニー株を多量購入
 ・シャリーア適合の日本株指数「S&P TOPIX150シャリーア指数」

目次

プロローグ 金融市場の新たな勢力
第1章 イスラム金融、これだけ知れば大丈夫
第2章 有力グループ、MEDUSAのパワー
第3章 目が離せない、あの国この国
第4章 インフラ投資にイスラムマネーを

ISBN:9784344980792
出版社:幻冬舎
判型:新書
ページ数:224ページ
定価:740円(本体)
発売日:2008年05月30日第1刷

読書状況:いま読んでる 公開設定:公開
カテゴリ: ビジネス
感想投稿日 : 2023年12月21日
本棚登録日 : 2023年8月15日

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