東京日記2 ほかに踊りを知らない。

著者 :
  • 平凡社 (2007年11月17日発売)
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感想 : 121
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川上弘美 『ほかに踊りを知らない。(東京日記2)』
(2007年11月・平凡社)

 七月某日 雨
 ひさしぶりに、俳句をつくってみる。
 破調の句である。
 「ごきぶり憎し 噴きつけても 噴きつけても」

 三月某日 晴
 電車に乗る。隣に座っている人が、熱心にメールを打っている。つい、のぞきこむ。
 「愛されることへの覚悟が、私にはないのかもしれません」という文章だった。
 びっくりして、思わずじっとその人の横顔を見る。不思議そうに見返される。
 そんなにびっくりすることも、ないのかな。思い悩む。
 やっぱりびっくりしたほうがいいんじゃないのかな。思いなおす。

 たんたんと、ちょっとシュールに、日々は流れゆく――。
 ウソじゃないよ、五分の四はホントだよ。カワカミさんの日記、続いてます。

 2004年~2007年分を収録した『東京日記』第2弾。 (Amazon HPより)

日記が好きだ。
と言っても、自分で日記を書くのが好きなのではなく、人が書いた日記を読むのが好きだ。

日記。エッセイ。私小説。
似た匂いがするけれども、日記がいちばん良い。
その日にしか書けないから。
嘘がつけないから。
他人の生活をのぞき見しているような気分になるから。
同じ匂い、同じ空気を、感じられるから。

川上、弘美さん。
もちろん名前は知っているが、作品はアンソロジーでちらりと読んだ程度。

読んでみてびっくり。

・・・か、かわいい。

あとがきに、「五分の四くらいは、うそみたいですが本当のことです」と書いてあるから、
多少は脚本されているのだろうが、それはもうどうでもいいわけで。

この人の思考、行動、そして文体が作る透明な空気感にすっかりやられてしまった。
うぬぬ、と唸りながら一気に読んでしまい、著者略歴を見て年齢を確認し、なぜか少しほっとする。
これが同年代なら、一目惚れしてしまってファンレターなんぞ書きかねなかったから。

生まれて初めてのファンレターこそ書き損ねはしたものの、なんとも得した気分になれたある日記マニアの一日でありました。

80点(100点満点)。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: エッセイ
感想投稿日 : 2012年9月24日
読了日 : 2008年1月4日
本棚登録日 : 2012年9月24日

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