四世紀の末、明石海峡に面した垂水。葛城垂水王の娘、タカヌカヒメが、近江の息長宿祢王のもとへ嫁ぐ日が近づいていた。
しかし、タカヌカヒメには、想う人がいた。同族の青年、ムジナである。
ある時、神懸りしたタカヌカヒメは、伊川の上流にある神の谷に走り去る。後を追う垂水王とムジナ。ムジナはタカヌカヒメを捕らえようとするものの、龍神にとり憑かれ、意識のないままタカヌカヒメを犯す。
秘密を胸に秘め、ヒメは近江へと嫁いでいった。傷心のムジナも、新天地を求め、日向の国・諸県へと旅立つ。
かつて景行天皇がとった領土拡大政策は失敗に終わり、大和の王権に弱体化をもたらしていた。病弱な成務帝には子がいない。王族たちが王位をめぐって暗闘するなか、神の力を信じない偉丈夫・タラシナカツヒコ王子は政権を奪取すべく立ち上がる。
息長宿祢王とタカヌカヒメの間に産まれた息長姫は、巫女の資質と大柄な体をもつ、圧倒的な存在感を発する娘に成長した。姫の豪勇譚を耳にしたタラシナカツヒコ王子は、彼女こそ王者の妃にふさわしいと考え、近江を訪れる。
二年後にタラシナカツヒコの妃になるという神託をうけた息長姫は、その間、海の神に仕えるべく敦賀へ移る。
息長姫の住む鶴賀の地へ、一人の男が漂着する。それは、日向から大陸へ交易の旅に向かう途中、嵐にあい、記憶を失ったムジナだった。
黒岩作品のなかでも特にシモネタが不愉快な本作。苦手な人は注意。
読書状況:未設定
公開設定:公開
カテゴリ:
記紀:小説
- 感想投稿日 : 2011年11月6日
- 本棚登録日 : 2011年11月4日
みんなの感想をみる