アムニジアスコープ

  • 集英社 (2005年8月26日発売)
3.45
  • (6)
  • (6)
  • (13)
  • (3)
  • (1)
本棚登録 : 89
感想 : 12
3

どもりにコンプレックスを抱く主人公(ライターのようなもの)が、嘘の映画評を書いたり、映画を撮ったり、あと女性遍歴を振り返る、とかそういう話。率直に言って意味分からん。セックスを題材に扱った村上龍の小説をつまらなくして難解にした感じ。「存在の耐えがたき軽さ」を村上龍が書くとこんな感じかも。とりあえず、よくわかんねえんだよなあ。ストーリーも特にないし。まず同時代性を意識している作家なんだろうけど、舞台設定のアメリカがよくわかんない。SF風味の世界に見える。そこで言いたいことを適当に申している。ところで、日本ではそこそこ人気があって、アメリカではエリクソンの評価は低いらしいんだけど、こういうのが受けない国なんだろうな、と思った(だから村上龍はアメリカでは受けないんだろう)。あと、訳文がよく分からない。この人わかってんの?って感じがする。元々柴田元幸は分かることに対して消極的かもしれんけど、一個一個の文章のつながりのない独白が続く小説なんだけど、原文もわかんないのかもしれないけど、でもそのまま訳してもよくわかんないだけで、それでいいのかと思った。柴田氏がこんな小説も訳すんだなあというのは意外な発見。とりあえず、エリクソンは他に面白いのがいっぱいあるらしいので、これから読むことはなかったかもしれん。主人公の属性などが本人とかぶっているから、精神的には自伝っぽいところもあるらしいんだが、これはむしろ自慰ですよ。大江健三郎のある小説に、あまり考えずに無駄に難解な言葉を書き連ねた自分勝手な作品だ、みたいな批評がされているのを見たことがあるけど、これもそんな感じ。ここに9・11を絡めて言及しようとするのはアホだとしか言えん。ここにつづられた言葉はそんな自覚的なものではない気がする。料理して出せばすごい食材を生のままで出している。だから、ところどころ面白い話や捉え方は出てくるんだけど、それ以上でも以下でもないという。星3つから、そのところどころに敬意を表してプラス1、これがアメリカの小説であることでマイナス1(それと俺に親和性がないので、入って来れない点において、村上龍ほど楽しめない)で、3。

読書状況:未設定 公開設定:公開
カテゴリ: 集英社/集英社インターナショナル
感想投稿日 : 2006年2月17日
本棚登録日 : 2006年2月17日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする