D県警シリーズの連作短編集。
本作の主人公は似顔絵婦警の平野瑞穂。D県警シリーズ第1作の『陰の季節』収録の「黒い線」で失踪騒ぎを起こした張本人である。「黒い線」では平野瑞穂は脇役で、それを管理する七尾友子という人物が主人公だった。今回はその主役と脇役が入れ替わり、失踪騒ぎで人事異動になった平野の1年間を追うというストーリー仕立てになっている。
失踪騒ぎについては、第1話の「魔女狩り」で触れられているが、詳細はやはり「黒い線」を読まないと分からない。「黒い線」を読んだ後に本書を読み進めると時系列になって分かりやすいが、本書を読んだ後に「黒い線」を読むのもおススメ。
本書だが、警察という男社会の中において、周囲に振り回されながらも自分の存在価値を模索する平野の姿が描かれている。似顔絵を描いていたことで培われた観察眼や他人に対する柔らかな物腰が随所に表れ、読み進めていくうちに徐々に人間性が形作られていく印象を持つ。ミステリーなのだが、主人公をついつい応援したくなってしまう構成が印象的な作品。
読書状況:読み終わった
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- 感想投稿日 : 2019年12月16日
- 読了日 : 2019年12月15日
- 本棚登録日 : 2019年12月13日
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