生命と息吹が胸に力強く響き、
軍人を越えた「人間」の生き方を描いた長編小説。
タイトル通りこの本は戦争時代の艦隊の物語です。
ただ1つ違うのは人間の心と心の連鎖によりこの物語は紡がれているということ。
最初読む前は戦争物は好きではありませんでした。
艦隊や軍人ものは専門用語があり難しく、また日本は敗戦国なので結末はわかりきっている。
好きな人には申し訳ないが、
軍人の誇りを追求した自刃や特攻は物語を盛り上げる1つの結末だけれども、
そこに私が本で求める美学は無いと感じたから。
しかしそれもこの本を読んで印象が劇的に変わってしまった。
この本はハードカバーサイズだと上下巻にわかれている。(文庫は4冊)
最初はやはり艦隊や軍人の難しい専門用語が並べられ気後れするが、
途中から人物たちの心が自分自身に透過されるとその専門用語が不思議と気にならなくなる。
そして軍人として日本を守るという誇り、
というようなよくある戦争物語ではなく。
この本はそれを超越した人間の誇りを謳って描いていた。
何よりも人間らしい脆く儚きそしてそれをバネにする力強さを感じた生命の物語。
私の好きな雰囲気だと感じてしまった。
陰謀埋めく伏線もたくさん詰められており、
読み手をあっという間に騙すテクニックも散りばめられていて、素直に楽しく読める部分も多くある。
そして何よりも一番驚いたのが、約1000ページの小説の中で(※ハードカバーサイズ)覚えきれないようなたくさんの登場人物たちが現れる。
しかし誰1人捨てキャラはいない。
作者は登場する1人1人の人物の心情や想いを、
丁寧に生身の人間のように描いている。
それがよりこの暗く悲しい戦争という物語に彩りを加えている。
読了後は気持ちの整理がつかないままに色々な感情面や心情が揺らぐ。
そして私は悲しいような安心したような涙が溢れてきた。
様々な人間の駆け抜けた人生、その全ての息吹をこの本から感じたからだ。
人は様々な想いを他者に預ける。
またそれを引き継ぐ者の切なる想い、叫び、葛藤、温もりなど…。
色々なモノを受け止め私は今を生きなくてはならない。
そう…切に感じてしまったまるで生命の教科書みたいだ。
- 感想投稿日 : 2011年9月8日
- 読了日 : 2011年7月3日
- 本棚登録日 : 2011年7月3日
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