現代の腐敗を一掃し新たな新時代の礎をそれぞれのやり方で築こうとする者たちの物語。
合計1100ページの長編小説。
特殊組織やテロ、政治家や官僚たちの腐敗を描き、それらに巻き込まれた者の復讐と日本の再生を起こすための作戦が「ローズダスト」
主役は中年の刑事と特殊組織の青年。
物語を進める上で老と若の絶妙な掛け合いと衝突が良かった。
感想を深く記したくても、この物語は深く抉るような捉えどころが無く難しい。
しかし自衛隊の兵器に詳しい人なら十分に楽しめる作品には違いない。
私は「終戦のローレライ」が福井作品を知る初めての小説だった。
そちらと比べると今作は登場人物たちの心理や心境が深く綴られていないような気がした。
特に敵側のローズダストのメンバーの心境が少ない。
こちら側サイドの人間心理はよく描いている印象を受けたが、
敵側のサイドを深く知り得なければ彼らの悪意でもない人間の存在価値を追求したローズダストの作戦が活かされていない印象を受けてしまった。
しかし1つの小説として、他の作品を見比べなければ十分に楽しめる。
中年刑事と青年の心の面での成長と葛藤も見所で、読み手は十分に彼らの気持ちを知ることができる。
それぞれの譲れない戦いへの思いは、過程や形が違えど根本的な本質は同じに見えた。
そしてこの小説は現実でも日本が直面しているアジアやアメリカとの外交問題も忠実に描いていて、改めて学ばされる。
そして気付かされる。
今の日本は他力本願でマスコミの情報だけで簡単に鵜呑みにし飲み込む。
自分で日本という国がどうあるべきなのか、そして現代に生きる人間が自分自身で考える力が欠落している事実に直面する政治的な小説に私は思えた。
- 感想投稿日 : 2011年9月8日
- 読了日 : 2011年7月25日
- 本棚登録日 : 2011年7月25日
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