その朝、母の真知子は、「ようないことがあるから、行かん」と勤労奉仕に行くのをしぶった。美しく、気ままな母をたしなめようともせず、祖母タツは昭子に母の同僚へ使いを頼むのだった。
雲一つない、暑い夏の朝。一級上の道子と女学校に通う道すがら、その時がやってきた。
ヒロシマの原爆投下をめぐる3つの物語。
総ルビで、丁寧な言葉で綴られた3編は、あっという間に読めるほどだけれども、言葉のひとつひとつが心に深く深く沈んでいく。教科書にも載っていそうな文章は、昔の作品のようで、出版は昨年。「今」だからこその物語なのだと気づく。
記憶すること、忘れないでいること。それは決して、とどまっていることではなくて、前を向いて生きることなのだと、今日も教えられたような気がする。
読書状況:読み終わった
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カ行の作家
- 感想投稿日 : 2013年10月5日
- 読了日 : 2013年9月7日
- 本棚登録日 : 2013年9月7日
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