八月の光

著者 :
  • 偕成社 (2012年6月21日発売)
4.18
  • (28)
  • (23)
  • (14)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 211
感想 : 43
5

 その朝、母の真知子は、「ようないことがあるから、行かん」と勤労奉仕に行くのをしぶった。美しく、気ままな母をたしなめようともせず、祖母タツは昭子に母の同僚へ使いを頼むのだった。
 雲一つない、暑い夏の朝。一級上の道子と女学校に通う道すがら、その時がやってきた。

 ヒロシマの原爆投下をめぐる3つの物語。
 総ルビで、丁寧な言葉で綴られた3編は、あっという間に読めるほどだけれども、言葉のひとつひとつが心に深く深く沈んでいく。教科書にも載っていそうな文章は、昔の作品のようで、出版は昨年。「今」だからこその物語なのだと気づく。
 記憶すること、忘れないでいること。それは決して、とどまっていることではなくて、前を向いて生きることなのだと、今日も教えられたような気がする。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: カ行の作家
感想投稿日 : 2013年10月5日
読了日 : 2013年9月7日
本棚登録日 : 2013年9月7日

みんなの感想をみる

コメント 0件

ツイートする