モーダルな事象 (本格ミステリ・マスターズ)

著者 :
  • 文藝春秋 (2005年7月10日発売)
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本棚登録 : 200
感想 : 41
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 生駒山の麓に位置する麗華女子短期大学で、近代日本文学を教える桑潟幸一助教授は、これは!とばかりに意気込んでいた仕事を奪われ、失意の日々を送っていた。
 そんなある日、桑幸のもとに研修館書房の猿渡が突然訪ねてくる。猿渡の依頼は、桑幸が以前「近代文学者総覧」で執筆を担当した童話作家「溝口俊平」の未発表の作品が見つかり、雑誌に掲載することになったので、紹介の文を書いてほしいというのだ。内容にも、謝礼にも、内心ほくそえみながら、しぶしぶ引き受けることにした桑幸。無事執筆は終わり、雑誌は刊行。思わぬ反響に気をよくしていた桑幸だったが……
 やがて、猿渡が行方不明になり、その頭部が瀬戸内の島で発見。しかも、彼こそが、生駒山中で見つかった首無し遺体だったことも判明して……。

 桑幸こと、桑潟幸一助教授(この頃は助教授)のもとに、ある童話作家の遺稿が見つかったとのことで、紹介文を書いてほしいという依頼が来たことから物語が始まります。当初は、紹介文を書くだけだったのに、いつの間にやら、見つけたのも先生ということでと、猿渡に押し切られてしまい、世間の注目度にまんざらでもない桑幸は、あれよあれよと流されていってしまいます。
 しかし、童話の反響とは裏腹に、猿渡は謎の死をとげ、童話の出版を企画した京都の出版社の男性までが事件に巻き込まれてしまい……

 今回事件を解くのは、諸橋倫敦(もろはしろんどん)と北川アキという、「元夫婦(めのと)刑事(デカ)」のコンビ。この2人がどちらかというと主人公に近くて、桑幸は、ずっと翻弄され続ける役柄でした。(次作とは、キャラも微妙に違う)

 途方に暮れるほど長く、夢か現実かという描写にやや疲れるものの、後半、ゾクゾクするほど全体がつながってきて、おぉ!という感じでした。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: ア行の作家
感想投稿日 : 2011年8月31日
読了日 : 2011年8月31日
本棚登録日 : 2011年8月31日

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