奪還の日 - 刑事の挑戦・一之瀬拓真 (中公文庫 と)

著者 :
  • 中央公論新社 (2017年4月21日発売)
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感想 : 34
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よかったけど、もう一度は読まない。

結構長かった。あと、このシリーズの全話もそうだったけど、犯罪の内容や操作の仕方が巧妙ではなく、推理小説としては物足りない。一番もったいないと思うのは、「結局これは夫婦愛のはなしだった」と終盤で繰り返されること。作者が伝えたいことを受け取らねばいけない不自由さが後味を悪くするし、もう一度読む気にならない。読むときによって、一番刺さる部分が変わるような読み方を自由にしたいから、この装飾をしがちな著者は苦手。

でも、愛とは何か、は考えさせられて面白かった。前作は、仕事とかって、そんなに全部を捨ててまでしなくていいよね、という話だったけど、今作は逆に、愛のためなら他の全てを捨てて殺人も詐欺も何でもしてしまう気持ちは分かるということだった。でも、その愛も、ヒモみたくなっているのが犯罪に走り始めたとかだと、それは愛というかエゴというか。愛ってやっぱ自分のためなのかな。
もちろんそんな大きな話じゃない軽い気持ちの、罪の意識の低い動機の人もたくさんいて、それが集まって社会の根源ができちゃったりすることに警鈴を鳴らすところも、背筋が伸びてよかった。バイト感覚の運び屋が、アメリカのドラッグ社会の一部になっちゃってるってとこ。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2018年1月7日
読了日 : 2018年1月7日
本棚登録日 : 2018年1月7日

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