競争と公平感: 市場経済の本当のメリット (中公新書 2045)

著者 :
  • 中央公論新社 (2010年3月1日発売)
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(2015.06.24読了)(2013.07.16購入)
副題「-市場経済の本当のメリット-」
経済に関するエッセイという感じです。かつて、竹内宏さんや飯田経夫さんの著作を楽しく読ませてもらいました。
この本は、視点やテーマは面白いのですが、説得性に乏しいという印象でした。

【目次】
プロローグ 人生と競争
Ⅰ 競争嫌いの日本人
  1 市場経済にも国の役割にも期待しない?
  2 勤勉さよりも運やコネ?
  3 男と女、競争好きはどちら?
  4 男の非正規
  5 政策の効果を知る方法
  6 市場経済のメリットは何か?
Ⅱ 公平だと感じるのはどんな時ですか?
  1 「小さく産んで大きく育てる」は間違い?
  2 脳の仕組みと経済格差
  3 二〇分食べるのを我慢できたらもう一個
  4 夏休みの宿題はもうすませた?
  5 天国や地獄を信じる人が多いほど経済は成長する?
  6 格差を気にする国民と気にしない国民
  7 何をもって「貧困」とするか?
  8 「モノよりお金」が不況の原因
  9 有権者が高齢化すると困ること
Ⅲ 働きやすさを考える
  1 正社員と非正規社員
  2 増えた祝日の功罪
  3 長時間労働の何が問題か?
  4 最低賃金引き上げは所得格差を縮小するか?
  5 外国人労働者受け入れは日本人労働者の賃金を引き上げるか?
  6 目立つ税金と目立たない税金
エピローグ 経済学って役に立つの?
競争とルール あとがきにかえて
参考文献

●たばこ(114頁)
「たばこを吸う人の多くは、ギャンブルもやるし酒もやる」
たばこを吸う人は吸わない人よりも不幸であり、その不幸の程度は、年収が約200万円減ったのと同じだという。スモーカーやギャンブラーは、住宅ローン以外の負債を抱えている比率も高いそうだ。
●所得・資産格差(127頁)
小泉首相は「格差が出ることが悪いとは思わない」、「成功者をねたんだり、能力あるものの足を引っ張ったりする風潮を慎まないと社会は発展しない」とも発言している。
失敗しても再挑戦可能な社会を目指すべきだと訴えている。
●所得格差(129頁)
1990年代の終りから2000年代の初頭にかけては、若年層での所得格差が拡大している。この若年層の格差拡大は、超就職氷河期で急増したフリーターと失業者が原因である。
所得税の累進度の低下も可処分所得の格差を拡大させ、消費格差を拡大する要因になる。
●才能と学歴(133頁)
アメリカでは「学歴が所得を決定する」と考えている人の割合は77%であるのに対し、日本では43%にすぎない。また、アメリカでは「才能が所得を決定する」と考えている人が60%であるのに対し、日本では29%である。アメリカ人が重要だと考えているのは努力、学歴、才能の順番であるのに対し、日本人は努力、運、学歴の順番である。
●不況の原因(147頁)
需要の減少が不況の原因だと考えるほうが自然である。
●経済停滞(176頁)
90年代の日本の経済停滞の要因は、生産性の上昇率が低下したことに加えて労働時間が短縮されたことであった
●長時間労働(179頁)
長時間労働の規制が必要なのは、他に職場がないために仕方なく低賃金で長時間労働をせざるを得ないという場合、長時間労働の職場であるということを知らずに就職し、転職市場が十分ないために長時間労働をせざるを得ない場合である。
●税抜き価格(211頁)
消費者はたとえ売上税を正しく知っていたとしても、店頭の価格表示でそれが示されていないと、消費行動は店頭価格だけに依存してしまうことを意味している。つまり、売上税が店頭表示されないと、消費者はそれに影響されないで消費量をきめてしまうので、売上税を実質的に負担してしまうことになる。

☆関連図書(既読)
「アダム・スミス」高島善哉著、岩波新書、1968.03.20
「アダム・スミスの誤算 幻想のグローバル資本主義(上)」佐伯啓思著、PHP新書、1999.06.04
「ケインズ」伊東光晴著、岩波新書、1962.04.20
「ケインズ」西部邁著、岩波書店、1983.04.14
「超訳『資本論』」的場昭弘著、祥伝社新書、2008.05.01
「超訳『資本論』第2巻」的場昭弘著、祥伝社新書、2009年4月5日
「超訳『資本論』第3巻」的場昭弘著、祥伝社新書、2009.04.05
「高校生からわかる「資本論」」池上彰著、ホーム社、2009.06.30
「マルクス・エンゲルス小伝」大内兵衛著、岩波新書、1964.12.21
「賃労働と資本」マルクス著・長谷部文雄訳、岩波文庫、1949..
(2015年8月20日・記)
(「BOOK」データベースより)amazon
日本は資本主義の国のなかで、なぜか例外的に市場競争に対する拒否反応が強い。私たちは市場競争のメリットをはたして十分に理解しているだろうか。また、競争にはどうしても結果がつきまとうが、そもそも私たちはどういう時に公平だと感じるのだろうか。本書は、男女の格差、不況、貧困、高齢化、派遣社員の待遇など、身近な事例から、市場経済の本質の理解を促し、より豊かで公平な社会をつくるためのヒントをさぐる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 社会問題
感想投稿日 : 2015年8月20日
読了日 : 2015年6月24日
本棚登録日 : 2015年6月22日

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