おもしろかった、ただの短編かなと思ったら人物たちが関連していて、少しずつそれぞれの背景や恋愛が明らかになっていくのがよかった。
みんな登場人物の女性が可愛らしく、どのキャラクターも好き。山田屋のお店の、庶民じみた感じにほっとする。境遇だって待遇だってひどいんだけど夢を売り続けた女性たちの華やかさが救いであり、山田屋には読んでいて愛着がわいた。
もちろん、そんな生活から抜けだせない女たち、惚れた男と一緒に生きながら好きでもない男に抱かれる女たちは辛いんだろうけど、
男の方だって、好きな女がいつも他の男に抱かれているというのは耐えられない葛藤があるんだろうなあと思う。女からしてみれば、仕事なだけだし、男のためにしてる仕事なんだと割りきってると思うけど。
一人の遊女が言っていたように、男だって女だって、誰もが惚れた人ばかりとうまくいくわけじゃない。実は好きな人がいるのにそれを心に抱えて夢を買いにくる男もいる、なんかそれって、別に遊郭の世界に限ったことじゃないよなと思う。
でも、好きな人とはうまくいかなくてもその後につながる。なんだろう、ほんとうに好きだった人、好かれていた人から向けられた表情を知ってるというのは、その人とうまくいかなくて終わりじゃなくて、
別の人と関係を深めるときでも、本当にこの人を好いてるんだろうか、好かれているんだろうか、というのがわかるのは、かつて好きだった人の顔を思い浮かべることができるからだ。
だから一時の感情でも好きだと思ったらその気持ちは大事にしたい。川を越えるかどうかは別として。
- 感想投稿日 : 2019年7月22日
- 読了日 : 2019年7月22日
- 本棚登録日 : 2019年4月20日
みんなの感想をみる