悪の教典 下

著者 :
  • 文藝春秋 (2010年7月29日発売)
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主人公は自分が天才だと思ってるらしいが、話が進むほど幼稚な考えで行動する事が多くなる。最後の『担当クラス40人を殺す』と決意するのも、死体を隠すのが面倒だから……という何とも無茶苦茶な思考回路だった。
先に最後の方を少し読んでしまって『クラスメイトを殺していく』というのは分かっていたけれど、それにしてもあんまりな理由だ。



所々に出てくる知識は読んでいるだけで面白い。
良かったと思えるのはそれくらい。



生徒とやりまくる教師の話は他でも読んでいるので正直、お腹いっぱいだ。さらに『無理やり挿入』……馬鹿な。そんな事をしたら、傷ついて大変な事になるだけで、気持ちよいと思えるわけがない。そう躾けたからとなっていたが、そんなファンタジーエロをここに持ってくるのか。こんなに博識な事を色々と組みこんで書かれているのに、エロに関してはファンタジーとか幻滅する。



さらに言えば、エロ教師は主人公一人ではない。養護教諭、体育教諭、美術教諭と……そんなに生徒とやりまくる先生ばかりが集まる高校はヤバいだろと突っ込みたい。
しかも、主人公も養護も美術も生徒との同意の元にそれが行われているという。
どこから突っ込んでいいんですかね? 相思相愛なら卒業まで待てよと言いたいし、それが出来ない教師はロリコンでしかない。



ただ、主人公に関しては大人の養護教諭とそう言う関係らしいし、カウンセラーにも手を出そうとしている。節操がない。そもそも、高校教師をやっているのも若い女とやりたいからという、高校生かと突っ込みたい思想しか持っていない。



さらに主人公以外にも殺人を犯している教師までいる。

教師側の倫理観が崩壊している。この時点で主人公の『凶悪さ』や『異常さ』は半減する。なにせ、他のキャラの倫理観が崩壊しているのだから、『そんな世界』としか思えない。

それでも前半は『何が起こるのか分からないワクワク感』はあった。
携帯電話でのカンニングの攻防は面白いなとも思えた。



それが中盤、教師を電車の中で自殺に見せかけて殺すというシーン辺りで、何だこれ?と思った。さすがに電車の中での自殺なんて聞いたことがない。物語だから何でもありとはいえ、あまりにも突飛すぎるし電車の中で首つり死体があれば、まず自殺ではなくて殺人を疑うだろう。あっさりと自殺で決定している理由が分からない。



続く殺人も『秘密がばれそうになったから』という理由で行われる。
最終的に一クラス全員+教師3人を殺して『秘密を隠喩』しようとするが、この殺戮の後半もカラスの幻影や銃が喋り出す幻聴の描写が入り主人公が意外と『普通の人なのではないか』という疑惑しかない。



共感能力がなくても殺人の実行はストレスであり、過度のストレスがかかれば幻聴・幻覚を見るようにもなる。
主人公はただの小物なキャラに成り下がってしまったなと思ってしまった。



最終的に、録音音声が見つかり主人公の犯罪が発覚するが、その前にあんなに銃を打っていたら消炎反応が出るものではないのだろうか?
手袋はしていたが、衣服にも大量に射撃残渣は残っているのでは?と思うのだが、その検査すらせず主人公の話だけを鵜呑みにする警察はどうなのだろうか。





ここまで、様々な知識が織り交ぜられていて読むたびにため息が出そうになったのに、最後の最後であまりにも稚拙なのでは?と思う事が多すぎる。
もちろん全て『物語だから』で呑みこめばいいのだろうが、雑な部分と作りこまれてる部分の差が激しすぎて……どうなってるのだろうか?と思ってしまう。



エロ部分はあまりにもファンタジーを詰め込みすぎだし、グロ部分は『頭を吹き飛ばされた』『死体が転がっている』『血だまりに伏せてじっとしていた』という程度の可愛い表現なのでそこまでではないと思った。

物語や人物から受ける恐怖もない。



捕まった犯人が、通報者(生き残った生徒)に復讐をするかもしれないというのも、ありきたりな『恐怖』なのでそこまで怖いとも思わなかった。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 小説
感想投稿日 : 2023年12月15日
読了日 : 2022年5月8日
本棚登録日 : 2023年12月15日

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