2016/7/12読了。
先日読んだ佐多稲子の『私の東京地図』が、東京という都市を実に見事にメディアとして用いている小説だったので、そういうテーマの本を読んでみたくなった。本書はそのものズバリ、映画や小説やアニメなど様々なフィクションに描かれた東京が象徴するものの変遷を追って、東京の移り変わりを書き留めるメディア都市論だった。
東京のスクラップ&ビルドについては、僕は基本的には古い風景遺産が壊されて味も素っ気もないファストな風景に変わっていくことを苦々しく思う者だが、本書の日本橋論にはちょっと目から鱗が落ちる思いだった。
日本橋の上に架かる首都高速を不粋なものとして撤去を目指す運動があり、僕もそれにはシンパシーを感じていたのだ。ところが本書ではその首都高を、エネルギーに溢れていた半世紀前の日本人の魂が込められたもの、タルコフスキーの映画にも描かれたことがある世界的にも稀有な存在として、すでに遺産として見る視点が紹介されていた。なるほど。首都高ってもう新しいものじゃないのね、という驚き。
新奇な風景も時を経れば遺産になる。東京が遺産として尊ばれる風景を生み出し続けるためには、更新され続けなければならない。なかなか興味深いパラドックスだ。
読書状況:読み終わった
公開設定:公開
カテゴリ:
ノンフィクション
- 感想投稿日 : 2016年7月12日
- 読了日 : 2016年7月12日
- 本棚登録日 : 2016年7月4日
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