デッドエンドの思い出 (文春文庫 よ 20-2)

  • 文藝春秋 (2006年7月7日発売)
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本棚登録 : 9793
感想 : 914
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せかせかとまわっていく日常のなかに、ほっこりとした物語と、さらにはその物語の中に、せかせかとまわっていく日常では気づけない、大切な、細やかな瞬間を感じたくて、手に取った。

大切な人を改めて大切だと思わせてくれる描写と、日常的に溢れている何気ない幸せへの気づき、そして、誰かと別れることの、哀しさ。心にぽっかりと穴が空いたような。

この作品は、その穴に、すっと、優しく入ってきて、包み込んでくれるような温かさがあります。
誰かを失って、誰かと出会って、誰かの大切さに気づいて、わたしたちは生きてゆく。

やはり表題作の「デッドエンドの思い出」が一番よかったです。
一度受けたダメージから回復することって、ものすごく時間がかかることで、目を逸らしていた部分、自分の心の奥深くを見つめる作業でもある。
そうやって、心を無防備にした瞬間に、人の優しさが、ふわっと、ぐっと、入ってくる。その優しさの質量は、前と変わらないはずなのに、ダメージを受けた心には、その何倍もの質量で、入ってくる。
だんだんと満たされてゆく心が、大丈夫と思えること、今を大切にできるということ、自分を大切にできるということ。
ずっと大切にしまっていた、素直な気持ちが現れてくる。
そんな素直な気持ちで人や物と向き合っていくと、なんだか、どうにかこうにか生きていける気がしてくる。

読書状況:読み終わった 公開設定:公開
カテゴリ: 未設定
感想投稿日 : 2019年6月17日
読了日 : 2019年6月17日
本棚登録日 : 2018年9月30日

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