突然邦画が観たくなって。
ゆったりとした音楽と、都会でありがならものんびりとした田舎を思わせるような空気感で始まる本作品。
夫婦は、大きくはない居酒屋を経営している。常連客やサラリーマンで店内はにぎわっている。
開始7分。世界は一変する。
西川美和監督作品。
ふとした瞬間だった。ほんの少し、目を離しただけ。
夫婦は火事でお店を失ってしまう。
生きてゆくために現実を見て、強くしなやかに生きる妻役を松たか子、
現実を受け入れられずに絵にかいたように堕落する夫役を阿部サダヲが、それぞれ演じている。
しかし、妻は強くしなやかであるだけではなく、したたかさを持っていた。
そしてダメ夫は、馬鹿で素直で嘘がつけないが、愛されキャラだった。
強い妻は、ダメ夫のそのキャラクターを利用し、あることを思いつく。
二人の、再起をかけた、物語。
しかし。
この物語を、夫婦二人の、どんな物語とするか。
それはおそらく、観る側にゆだねられている。
夢を求め、夫婦一丸となって前を向いていこうとする物語か、
妻が夫に、仕返しをしていく物語か、
出来心が少し道を誤ったことによる顛末を描いた物語か、
女の子を嵌めまくる物語か。
もやもやする。これでいいのか感が半端ない。だけど、他に何があったというのだ。
けれど、これら全てが、この物語なのかもしれない。
中でもわたしは、「仕返し」を色濃く感じたかな。
松たか子の絶妙な表情の演技。強くしなやかな印象から、静かな怒りと孤独を抱え、夫を見るそのまなざし。前半と後半で、彼女の印象は変わっていく。
阿部サダヲは、流されつつも自分を犠牲にしてまで誰かのことを想っている感じを上手に演じててはまり役。
最後にタイトルの意味が、どしんと、くる。
- 感想投稿日 : 2021年2月28日
- 読了日 : 2021年2月28日
- 本棚登録日 : 2021年2月28日
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